イマドキの留学生 / カナダトロント大学サマープログラム同行を終えて (前半)
今年は3年ぶりにトロント大学の主催するサマープログラムに同行者としてプログラムに参加する生徒約30人を連れてカナダ・トロントへ渡航しました。私は1週間の渡航でしたので既に帰国をしましたが、10年以上も前からこのプログラムに子供たちをサポートする目的で渡航しています。子供たちの留学成功をサポートすることがメインの目的ですが、子供たちが留学を通して短期間で成長する姿を見ることで、留学の持つ素晴らしさを再認識することができるとても良い機会となっています。
同時に、留学をする子供たち、そして子供たちを取り巻く環境を定点観測する場として、非常に示唆に富んだ経験となっていることについては今も昔も変わりません。
このプログラムに関わり始めた10数年前、その頃はまだまだ我々大人の持つ携帯電話も今で言うところの、ガラケーと呼ばれるシンプルなものでした。海外ではさらにシンプルでメッセージがせいぜい30文字ぐらい送信できるNOKIAの電話が全盛期だったと記憶しています。
その頃は、子供たちが携帯電話を持っていることは稀ですし、海外でも使える携帯電話はゼロでした。当然のように各部屋には電話が設置されていて、家族への連絡はその電話を通して連絡をすることになります。電話での連絡には高額の通話料がかかりますから、到着したその足ですぐに子供たちを近くのコンビニエンスストアに連れて行き、安く国際電話ができるカードを一緒に購入しに行きました。
ホームシックになった子供がいれば、私の部屋に電話が入って、私が駆けつけることになります。一緒にご家族へ連絡して涙を流しながら電話口で話す子供に寄り添いながら、気持ちが落ち着いてきたところで一緒にチョコレートを食べて夜を過ごしたのは良い思い出です。その生徒も今では立派な大人です。メールは唯一朝の朝食時間に図書館のPCで利用が出来たので、ご家族へ頻繁に連絡をしたい生徒たちは朝食はそこそこに図書館で授業までの時間を利用して一生懸命、ご家族へメールを打ち続けていました。
時が経つと少しづつ、PCを持ち込む生徒も現れ始めます。インターネットに誰でも、どこでもつながる時代が到来し、パソコンをネットに繋ぐための学生寮の受付にいるカナダ人スタッフへ英語で「イーサネットのコードを貸してください」と勇気を振り絞って伝えるのが、子供たちにとっての最初の難関になりました。子供たちの生活サポートをするスタンスから、子供たちにより多くの海外体験をしてもらうためのサポートへと私自身の子供たちに対するスタンスを変えたのもこの時期だと記憶しています。
そんな時代もすぐに終わり、Wifiがネット回線の主流を占めると今度は部屋のロケーションのよってネットが繋がらない問題が発生。それが一大事件になるほど、どんどんと子供たちとインターネットのつながりは急速に切っても切れない間柄になっていきました。
それでも、プログラム自体の本質は変わらず、空港に集合した当初の不安と緊張から少しづつ解放されて、いろいろな国の生徒との出会いや、初めて外国人や現地のカナダ人に自分の英語が伝わる経験を通して、自らの自信を深めていきます。
短期ながらもここでの経験は決して侮れないものです。プログラムが終わって空港の到着ロビーで心配そうな表情で到着を待つ親御さんたちの驚く顔を見るのは、実は私にとってこのプログラムのハイライトの一つとなっています。
子供たちはこの短期間で、一人で海外でやって来れたという大きな自信を胸に帰ってきますが、それは立ち振る舞いや表情、話し方に至るまで大きな変化として現れます。それを空港で目の当たりにした親御さんたちは、ただただ圧倒されて、驚くばかりです。3週間から4週間、社会人である大人にとっては何気なく過ぎていく、この期間で驚くべき成長を遂げた子供たちの姿を見て、驚く親御さんの姿を見ると留学の可能性、素晴らしさを感じられずには居られないのです。
実際に私の知っている日本人だけでも、このプログラムに参加をした後に英語の成績が上がって日本の優秀な大学に進学した子供たちは大勢いますし、中には長期留学に行くことを決意した子、そしてなんとトロント大学のキャンパスで現役の大学生として現地で頑張っている子と再会を果たしたことさえあります。
それでも、そんな素晴らしいプログラムも過渡期がありました。
後半へ続く。