Bring it to Sengakuji
教育コンサルタントという仕事をしているといろいろな感動に遭遇します。
日本の教育だけでなく世界にそれを探すとき、
感動の規模と場面は限りなく広がっていくように思います。
昨日のブログの続きは月曜日にして、今日は国際交流という視点である感動の話を
皆さんと共有したく思います。
私の友人に交換留学を専門としている人がいます。その人から聞いた話です。
昨年の交換留学の参加者が無事に1年間の留学を終え、
友人は彼を成田空港に出迎えます。東京へ向かう成田エクスプレスで、
参加者がホストファミリーのお父さんからあるものを託されたというのです。
ホストファーザーは大の日本好き。自らは引退した警察官で、
日本の武士の精神に傾倒しています。
さて、そのお父さん、日本からの留学生を相手にアメリカ文化を時に語り、
時に示し、自らの使命を全うすべく、若い訪問者の面倒を見ます。
さて、その留学を終えた生徒が友人に言うことには、
「これ、ホストファーザーが収めてくれっていうんです」
―チャレンジコインだね。コインと呼ばれているが、お金じゃなくて軍隊などで隊員の帰属意識を高めるために発行されるコインだね。彼らにとっては、大切なものだと思います。ところで、収めるってどこに。
Bring it to Sengakuji.
私の友人は、泉岳寺と聞いた時に、ホストファーザーの意図を瞬時に理解します。
すなわち、そこに祀られている赤穂浪士に捧げてくれということです。
ニューヨークで長年、警官を務めた人が、日本からの若者を1年間面倒見て、
その彼に託したものは、自分が大切にしているプライドの象徴を
「日本に帰ったら、泉岳寺に収めてほしい」と託す。
そのコインを託された高校生がこれから学ぶことは、何だろうと思います。
赤穂浪士がやったことは賛否両論ありますが、
長く語り継がれている日本の文化を象徴する一つの出来事です。
それが海外に伝わり、ある退役警察官が日本の若者と繋がる。
若者はまだ知識と経験が少ない故に、メッセンジャーとして、
自分が世話になった人の意思を全うすべく、泉岳寺に行く。
そこで、若者は何を見て、何を思い、何を学ぶのでしょうか。
また、彼はアメリカでの1年を今後どのように自分の人生に生かすのでしょう。
答えは彼が出します。
正解、不正解というものではありません。彼が主役になる人生です。
その若者のこれからのありように、大きな影響を及ぼすであろうアメリカ滞在は
ホストファーザーのメッセージによって一つのストーリーが
完結するように思います。
Bring it to Sengakuji.
これからの彼のストーリー、いつかまた友人はこころに満面の笑みを浮かべ、
きっと世界のどこかで聞く機会を求めて、仕事に励むことと思います。