日曜コラム 個別指導について
ある予備校が私のオフィスのあるビルの1階にできました。
沢山の受験生が出入りして、活況を呈すると思っていたのですが、
その予備校、いたって静か、静粛で授業を引けた後の
生徒の塊などどこにも見られません。
授業は、生徒が個別のブースでビデオによって行われているとのことです。
それならば、生徒の自宅でネット配信も可能なわけですが、
そのような「個別指導」が日本の受験スタイルとして定着していくことでしょう。
アメリカのボーディングスクールでは、驚くほどにSAT、
SSAT(ジュニアボーディングスクール)、TOEFLなど、受験に必須の
学力テストの体系的指導が行われないことは、
今まで折に触れて述べてきましたが、もちろんその傾向は変わることなく、
ボーディングスクールにおいてこれからも続くことでしょう。
彼らは、学力テストは、個別に指導するのではなく、生徒自身が
個別に自ら学習をするものと考えていると思います。
ビデオ授業ではなくても、日本では、個別指導、個別教室という
個人のための指導が増えているように思います。
ボーディングスクールでは、そのような個別指導はあくまでもオプションであり、
それに焦点を当てて運営しているボーディングスクールは多くはありません。
彼らの授業は、少人数によるディスカッション、グループによるリサーチと
そのプレゼンテーションといった形態が中心です。
個別がオプションでないとすると、
いよいよ学校の授業の意味が薄れるように思います。
学校では40人くらいの講義式授業を受け、それが終わると一転して、
個別指導になる日本の中学高校生は、自ずと人と人とのコミュニケーションの場を
少なくしつつあるのではないでしょうか。
学校での授業は聞いて、覚えて、テストでそれを記述するだけ、
覚えることをより多く、確実にするために、学校が終われば個別の指導を受ける。
このパターンには、人の意見を聞いたり、自分の意見を表明したりという
機会が重視されていなように思います。
だから、「人はどうでもいい」という発想に即結びつくとは思いませんが、
個人の判断や選択がこれから以前にも増して重要になるなかで、
その基本が人との関わりの中での個別であることが重視されてもいいと思います。