ボーディングスクールの教育―教育機会の均等性について
教育を受ける機会は法律で保障された国民の権利ですが、これは日米とも基本的に違いはありません。しかし、教育の機会均等という考え方には日米で大きな違いがあると思います。
日本の場合、あくまでも生徒たちに同じ授業、同じ試験、同じ評価をするのが機会均等と考えられているようですが、アメリカの場合、生徒個人の能力、特性を考慮して教育の機会を均等にしようという考えがあるように思います。
イギリス系の教育方式を採用しているニュージーランドにおいては、高校1年から3年の学習科目は日本よりもはるかに生徒に選択の余地を与えています。将来の目標に合わせて、高校時代から学習科目を自己選択にするというのも、個人を中心に考えれば、教育機会の均等性においては、進歩していると言えないでしょうか。
教育機会の均等性についてその違いが明確に現れているのが、TOEFLテストです。下記、TOEFLの公式ウェブページからの引用です。
TOEFL iBT® テストを受験される、障害を持たれる方または健康上の理由で特別な受験環境を必要とされる方は特別配慮をご利用いただけます。
技術面の対応
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IntelliKeys® キーボード
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専門家による援助
音声案内のみ手話通訳
音声案内のみ口話通訳
Listeningセクションのみ口話通訳
解答の筆記者/記録者
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適応面での対応
オーディオ版のテスト
音読者のスクリプトによるテスト
点字テスト (縮約形または非縮約形)
音読者のスクリプト付き点字テスト
大型活字版のテスト
標準活字版のテスト
Listening セクションの省略
Speaking セクションの省略
試験時間の延長
休憩時間の追加
音声部分のトランスクリプト (Speaking と Writing セクション)
身体に障害のある受験者ための配慮のみならず、ディスレクシア、ディスグラフィアといった識字に関する障害を持っている受験生のために、試験時間を延長したり、休憩時間を増やしたりすることは、将に、教育の機会均等の実践ではないかと思います。
いくら意欲があっても、識字障害があれば、視覚からの情報処理は困難を極めることは明確です。それを、「やる気が足りない」、「根性がない」などという精神論に置き換えるのは、障害を持つ生徒にとっては苦痛以外のなにものでもありません。
教育の機会均等を拡大していけば、たどり着くのは、本人のやる気のでる分野を気付かせ、それを応援して、社会に積極的に参加することの意義と必要性を認識させるということになるのではないでしょうか。
試験の結果を重視するあまり、教育という崇高かつ遠大な人間社会の一分野を見失ってはいけないと思います。
つづく