日曜コラム 和顔施について
瀬戸内寂聴さんによると和顔施(わがんせ)とは、
「笑顔をあげる」ことだそうです。
仏教でいうところの多々あるお布施の一つであるわけですが、
笑顔をあげるほうもいただくほうもその効果はとても大きいように思います。
和顔施の効用を実体験したのは、今年のある学校訪問においてでした。
その訪問は、大学出願を2年後に控えたボーディングスクールに通う生徒に
お父さんとお父さんの長年のお友達ご夫妻が参加されました。
学校訪問の旅では、予期せぬことも起こります。
食事の時間が確保できない、
ボストン、ニュ―ヨークなどの大都市では、予測できない
交通渋滞や、タクシー、地下鉄などの場合は移動手段の思わぬトラブル、
ホテル予約を取っていたにも関わらずそれが確認できない、
そして、フライトのキャンセルや遅延、
こちらが思っていた通りに運ばないことも良くあります。
ご年配のご夫妻の奥様は、予期せぬことが起こる度に、笑顔で笑うのです。
もちろん、ゲラゲラと笑うわけではありません。
「ふっ、ふっ、ふっ」といわば悟ったような穏やかで、
その場を和ませるように笑顔と発声をするのです。
私は直観的にその人のおおらかさ、人格的大きさを感じました。
「すごい」と思うのです。
トラブル発生、あるいは困ったという難しい局面で、
それを笑顔で受け入れてしまうというその人の日常の在り方に、
すごさを感じるわけです。
怒らない、受け入れる、どうにかなるということを実践するのは、
将にこの和顔施しかないだろうと私は思うのです。
笑う門には福来るとも言います。
笑顔や微笑みといった表現そのものに、人をハッピーにさせ、
前向きに、そして元気にさせるという作用があると私は確信しました。
本来、和顔施というのは、人に与えるものですが、
考えてみれば、自分自身も人です。
人に与えるということは、自分にも効果があると思います。
来年、1月、2月と学校訪問がありますが、
和顔施の実践で楽しいものにしたいと思います。