日曜コラム #2 英語で剣道
今年の7月26日の日曜コラム、「英語で剣道」で私の通う剣道場に入門した
若いフィリピン人英語教師に英語で剣道指南をすることについて述べました。
剣道稽古で欠かせない、間合いの取り方、先(攻めること)の気(意識)、
体重移動とバランスなど、日本語を英語に置き換えることが、
以外と難しいのは、たとえば、インターネットの英和翻訳機が、
現在のところ満足すべきものでないのと同様に、
言葉だけを訳してもその背景にある剣道精神をうまく伝えることができないと、
無味乾燥な「翻訳」となってしまい、面白くありません。
では、剣道精神とは何かというと、平常心、不動心、泰然自若、正々堂々など、
ですが、英語にこれらの言葉を訳すとなると、精神というよりも心理のほうが、
重要ではないかと思います。
Don’t lose your mind、You always accept your opponent、You should have stable state of mind whoever your opponent is、など日本語であれば共有できる
文化背景があるので、そのエッセンスとしての単語の解説は必要はありません。
しかし、その文化を共有していない人には、いちいち行動の説明とその理由を
セットにして伝えなければなりません。
フィリピンから来た若い英語の先生が剣道稽古を始めて半年以上が過ぎました。
1メートル80センチほど、頑丈そうな体躯の彼は、とてもまじめで熱心に
稽古に取り組み、毎日近くの公園で素振りもしているそうです。
まだ、打ち込み稽古のみですが、胴着と袴も様になってきました。
防具着装が先生から許されるまで間もないことでしょう。
今の彼の課題は、手と足の動きをシンクロさせることです。
初心者の場合、打つことに意識が偏ってしまい、腰から下が上半身を
十分に支える均整のとれた姿勢になる前に、手が出てしまういわゆる
手打ちになってしまいます。
相手の面を打つと同時に右足が着地し、腰から上は地面に対して
垂直の姿勢を保ち、さらに旺盛な気を示す気剣体の一致ができるようになるまで
根気よく自分の体に竹刀の振り方、バランスの取り方を
覚えさせるのが剣道稽古の基本です。
さて、彼は挨拶や生活に欠かせない日本語は通じるのですが、
まだ意思疎通のためのコミュニケーションは日本語では無理があります。
「オハヨウゴザイマス」、「アリガトゴザイマシタ」、「オネガイシマス」など
意欲的に大きな声で発声し、礼の仕方や稽古開始、終了時の基本作法も
学習済みですが、私との会話は、彼の方から自然に英語になります。
良い姿勢で打ち込めたときは、私はgood shotと彼に言います。
ゴルフではありません。
彼が面をつけて、立ち会えるようになるのが楽しみです。
きっと、かなりのスピードで腕を上げることでしょう。
「英語で剣道」、次回は彼が防具をつけた時に書きたいと思います。