自立に向けて
ボーディングスクールに生徒を送り届け帰国して、東京に向かう電車の中で、生徒のお父さんが、スカイプがONになっているが本人と連絡が取れない、どうしたのだろうと心配な様子でした。
生徒たちの現地での生活をこちらで逐一モニターはできませんから留学当初というのは、本人も親も心配の種は尽きないのかもしれません。
「本人からの連絡を待ちましょう」と私はお父さんに言いました。親の心配が子どもに伝播してはいけません。10月にはペアレンツウィークエンド(参観日)もあります。このイベントに日本から親が参加することは、簡単ではありませんが、それまでには、学校から本人の様子が1度は報告されます。また、アドバイザーに本人の生活状況をメールで尋ねることもできます。
英語が通じず、自分の部屋も整理整頓がままならず、あまり積極的には人と話すほうではないというようなことが一般的に親のわが子に対する印象ですが、そのような状況であっても子どもたちは一つひとつ自分の生活パターンを留学先で獲得していきます。
それが自立の第一歩なのでしょうが、自立の本質は感謝することにあると思います。
英語ができなくても、かたづけができなくても、積極的には最初から友だちができなくても、周囲に受け入れられて、どうにかなるという精神的な手ごたえがあるから、留学した子どもたちはやっていけるのだと思います。
寮の先生やプロクター(生徒の寮長)は、いつも元気に声はかけてくれるが、具体的な世話をしてくれるわけではない、だから自分でやっていかなければいけないのだと思えることが、留学生の異文化学習の第一歩となりますが、そこで彼らが思い浮かべるのは、日本での生活の豊かさや便利さでしょうか。
おそらく、それを感じる余裕は留学当初はありません。しかし、現地で一所懸命に生活をすればするほど、自然と親への感謝の気持ちは生まれるでしょう。そして、子どもたちがどれだけ親に愛されていたかということも、感じられるのではないかと思います。それ故に、子どもたちは安易に挫折をしたり、自暴自棄になったりはしません。
冷静に周囲を見つめ、自分が何をどれだけできるかを考え、出来る範囲内で生きていくということを「留学」を通じて身につけていきます。
留学生たちの新たな年度がスタートしました。