寮生活の始まりに際して
今回の私のミッションが終わりました。
寮で生徒と別れる際、彼の両手握手で考えさせられました。
不安、焦り、焦燥、憂鬱など、彼から感じたわけはありません。
また、彼がそのようなネガティブな意識を表現したわけではありません。
しかし、彼の両手握手は今までのことに対してなのか、
これからのことなのかと思うとき、「ありがとう、だけどこれから・・・」
といった複雑な気持ちに私もなってくるのです。
今まで千人を超す生徒をお世話してきましたが、
すべての生徒が留学当初、とても複雑な気持ちになるという
ことを私は共感したいと思います。そして、
改めて気を引き締めて彼らのお世話をしたいと思います。
寮生活を始める生徒にしてみれば、すべてがチャレンジでしょう。
今まで、何ら不自由のない生活から、不自由極まりない生活に突入するのです。
万能だったお母さんはもういないのです。
部屋の整理整頓はもとより、洗濯も食事も服装も知らないことばかりの
世界で生きていくのです。
留学当初は勉強どころではないかも知れません。
毎日、新たな問題を突きつけられるのが新入の寮生の現実でしょう。
それでも彼らは、帰ってこないのです。
中途で留学をやめてしまう生徒などいないのです。
私は自らの留学経験がこの仕事の基本になっていますが、
私がお世話している子どもたちも、私が留学した当初も
「ここで生活していくのだ」というこころ意気はなんら変わりません。
だから34年間、この仕事を続けられたのだと思います。
異文化を体験するというと、私たちは英語の問題に意識を向けますが、
寮生活というのは、英語の前に生活の根本が問われます。
それをカバーしてくれるのは、子どもたちが好きで、
ボーディングスクールスクールという特別な環境で働く先生たちです。
寮で生徒たちと一緒に生活をする先生は、家族もそこで暮らします。
彼らにとっては、学校イコール自分たちの生活の場です。
かだら、ボーディングスクールには小さな子どもたち、
犬や猫などもたくさんいます。
公私の区別がつけられないような生活と考えないのが、
ボーディングスクールの先生たちなのです。
「いつでも困ったときは、このドアをノックしなさい」と
寮で生徒と生活を共にする先生たちは気さくに新入生に声をかけます。
それはすなわち、生徒たちが声をかけなければ、すべて順調という
ことを意味しています。
新たな人間関係のもとで、留学生たちの寮生活は始まります。