健全な学校と留学
健全な学校は、健全な精神と体を育て、そこで学ぶ生徒の理性と良心を発達させて社会に貢献できる人間を作る。このような理念は誰にでも理解できます。しかし、その実践となると、とても難しくなるように思います。
現実は、健全な精神や体よりも、あるいは理性や良心よりも学習技術や要領が学生および生徒には重視され、先生が教えてくれることに対する素直な疑問や意見は、深い議論の対象とはならず、「過去問」情報を的確につかんで「試験」に望む学生あるいは生徒が良い結果を残す、と語ったのは中学高校時代、3年半の留学を終えて、日本の大学に入学した学生です。
健全な学校で健全に学習するために大切な要素の一つは体力です。留学生を世話して感じるのは、英語圏の学校が体育をとても重視することです。特にボーディングスクールにおいては、放課後のスポーツ参加は必須となっています。
不思議なことに、日本ではスポーツに傾倒していなかった生徒たちも、ボーディングスクールでの好むと好まざるとにかかわらない放課後のスポーツ参加で驚くことに彼らの隠れていた運動能力を見出して、表彰にまで結びつくケースがたくさんあります。
MIP(Most Improved Player)という表彰を多くの留学生が獲得しました。これは自分自身との競争ですから、とてもわかりやすく、結果はいわば「公平」であり、それを多くの人が分かち合ってくれるということに大きな意義があると思います。
「やればできる」という意識を生徒たちに植え付けるのに、スポーツ活動は最適です。そして、誰でもできる、気軽に努力もできるという学校側の工夫が素晴らしいと私は思います。
体力がつき、スポーツを通じて人と協力し合い、またチームとして勝ち負けを争うなかで、若者たちは常勝や常負などはなく、どのようなタイミングで勝ち、何が原因で負けるかを学んでいきます。
それが世の常であり、勝っても、負けても冷静であること、感謝すべき対象を見失わないこと、憎しみや嘲りといった負の感情から解放されること、こころの落ち着きを大切にする精神を学びます。
スポーツというボディランゲージは留学生たちに自信と喜び、そしてこころの平安をもたらします。時には、激しくぶつかり、競り合い、力の限りを尽くして争っても、その後のことこそ、学校が生徒たちに最も教えたいことです。
健全な学校は、そこで学ぶ生徒たちが納得する回答を与えるために、恒に考え行動します。