教育の多様性を考える 7 1年間での英語習得
<前日のブログに続きます>
留学後の英語力の習得は、自分の身の回りのものすべてを利用する総力戦と言えます。そのなかで、利用しやすいのが自分と最もかかわりの深い人物や場所、そして物ということになります。「それはアドバイザーです」あるいは「ESLの先生です」と答える留学はいません。
ボーディングスクールの先生は公立の学校や私立通いの学校に比較して、生徒に対して親身であり、親代わりである場合さえありますが、生徒の側からしてみれば頼りになる大人から日常が学べるわけではありません。
現実的には、留学生の学びにもっとも役立つのは友だちです。それ故に、同国人留学生と仲良くなるのは、自然のことなのです。それがいけないわけではないのですが、お互いに英語を学びに来ているわけですから、限られた時間の中で、あえて日本で話していたのでは英語力は伸びませんし、精神的にも 良くありません。理想としては、友だちは人種にこだわることなくまんべんなく持つことです。
7年生から留学して1年と4か月が過ぎた日本人留学生がいます。この生徒は留学当初の英語力はゼロでした。SLEPテストのスコアは28点です。正規に英語を学校で勉強して1年もたたないうちに渡航したのですから無理もありません。本人にとっては、留学当初、英語もフランス語も区別できなかったと思います。
日本で中学校3年間、英語基礎を勉強した生徒ですら、留学してから1か月間ぐらいは、相手の言っていることが全く分からないという現状からしても、日本で教育を受けた生徒のスタート時点での苦労は想像に難くありません。
さて、この生徒の現在の英語力ですが、日本の大学受験の長文を読ませたところ、その理解度は7割程度でした。国立大学や早稲田、慶応に出題された長文を網羅した英文解釈上級問題集です。ただし、辞書を使うことと読むことの制限時間は長く取っています。
より詳しく本人の英語力を確認すると、留学して半年ほどした時点のSLEPテストの点数が41です。これは英検の準2級に相当します。リスニング力は若さと環境適応の柔軟性でこのように向上します。この生徒は留学して、寝る間も惜しんで勉強をしていたわけではありません。起床時間、就寝時間、そして日々の生活スケジュールが明確なボーディングスクールにおいては、1日4-5時間も寮の部屋に閉じこもって勉強することは不可能です。
日本で6年間をかけて行う英語の勉強が中学、高校留学においては、6-7倍のスピードで英語の習得が行われることが解ります。
つづく