休日コラム 留学生の進路相談
今年の6月にボーディングスクールを卒業し大学に入学する生徒から
大学および進路につての相談を受けました。
お世話して5年目、いろいろなことがありましたが、
結果的に5校の大学に合格し、そのうち3校からは7000ドルから
1万ドル程度のスカラシップ(奨学金)をもらえるという快挙を成し遂げました。
合格した大学はすべてアメリカです。
ご両親としては、5年間もアメリカで過ごしたのだから、大学は日本にしてほしい、
特にお母さんとしては、わが子に家に帰ってきてほしいという親心が
強く、激しく、さらには感情的にも作用することでしょう。
その一方で、5年間のアメリカ生活を終えた本人は、ボーディングスクールライフを
振り返り、「大嫌いだけど大好き」という複雑な心境を私に語りました。
そして、日本の大学に進む意思はないことを改めて明確にしました。
一言でアメリカ生活について言えば、「気が楽」なのだそうです。
「日本は苦しい」のだそうです。異文化の中で単身生活をしたことがある人には、
この生徒の発言の意味するところが理解できると思います。
私もアメリカでの学生生活が2年間ほどありましたが、
この発言の意味は良くわかります。
本人としては、今のボーディングスクールと同じ州にある大学で学びたいのですが、
その学校の年間の費用はおおよそ6万ドルほどかかり、
残念ですが奨学金受給はなりませんでした。
親にこれ以上財政的負担はかたくないと思いつつも、
学友や親しくしている先生たちも多いその地域で勉強を続けたいというのが、
本人の偽らざる気持ちです。
専攻は早期教育(early education)にしたいという本人ですが、
「そのこころは」と尋ねると、日本のインターナショナルスクールのみならず、
世界の幼稚園や初等教育のあるインターナショナルスクールは世界中にあるから、
仕事の機会を世界に求めることができるからだそうです。
ひとりでどこでもやっていけるという精神が自然と身についている本人には、
こころのなかに「ホームスイートホーム」は明確に存在しても、
物理的な「わが家」に対する意識は、
お母さんのそれとシンクロしないかもしれません。
中学校時代の本人を知る私にしてみれば、
「いろいろな困難を自分で良く乗り越えたね。その一つひとつの経験が君の財産であり宝だ。専攻も君の特性がとても生かせると思う。いい先生になってくださいね。そして、多くの子どもたちを育ててください。世界に羽ばたいてください」
と心から言いたい気持ちです。
(つづく)