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日曜コラム 剣道 勝って打つ

スポーツとしての剣道は、こころのあり方をとても大切にします。
たとえば、理想的な竹刀の振りを目指すときに先生は、
「手で打つな足で打て、足で打つな腰で打て」と言います。
手で竹刀を持っているにも関わらず、足や腰で打てということは、
いかに腕と肩の力を抜き、下半身で上半身をリードして、竹刀を鞭のように
しならせることの大切さを表しています。
剣道には左利きがありません。私は文字を書くことと食事以外は
左利きなのですが、剣道では右手を使うことを極端に嫌います。
右手で竹刀をリードすると、腕の力任せに打つだけとなり、
結果的に肩に力が入って伸びのある打ちが出来なくなるのです。
余談ですが、幕末、明治の侠客として知られている清水の次郎長という人は、
真剣で相手と対峙して相手の刀の切っ先を弾いたとき、それがぎこちなく
戻るようであればこちらの勝ち、もしも弾いたこちらの剣先が
吸い込まれるようであれば「逃げる」と言ったそうです。
もちろん、これは伝説の類でしょうが、この動作はすなわち、
相手の上半身の脱力を示していて、下半身主導で大きく打ち込まれたら、
よほどの達人でなければ、よけることができません。
そうなる前にさっさと「逃げろ」という次郎長さんは、
なかり賢い剣士でもあったわけです。
剣道は実質の最高段位は八段です。
七段までは受験者の10%くらいの合格率ですが、
八段は1000人受けて4-5人しか合格者がいないという難関です。
そのハードルを越えた人が異口同音に言うのが、「勝って打て」ということです。
打たなければ勝てないのになぜ勝って打つのでしょう。
勝つためには、打つ前の動作が重要だということをこの言葉は示しています。
すなわち、どれだけ相手に近づけるか、そしてそこから相手より早く、
正確に打ち込めるかということです。
しかしながら、こちらが相手に近づけば、当然相手も自分に近いわけです。
先に遠くから打てば、相手に届かないので、余裕をもって相手によけられ、
更には反撃の絶好の機会を与えてしまいます。
近づきすぎても、相手に攻撃されるわけです。
剣道において、相手に勝ということは、打って打ってパワーで
圧倒することではありません。力任せに打てば、肩に力が入り、
打ちが単調になり、先に疲れて相手に反撃されます。
「勝って打て」それは、相手の姿勢や気持ちを崩すこと、
すなわち優位な立場を作れば、勝てるというわけです。
文字で説明すると簡単なのですが、いざ立会いとなると、簡単には行きません。
おそらく、だからそれに向けて、みな一所懸命に努力をするのでしょう。
スポーツとしての剣道、その精神の深さに多くの人が惹かれています。

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