その2 グローバル社会と相互理解
異文化間の相互理解ということは、中学生や高校生の留学においては、第一義のテーマではないかも知れません。なぜならば、理解などと言っていられるほど、彼らの留学は、特に初年度は、余裕などないからです。
精神的には飢餓状態であると言っていい彼らの留学生活を支えているのは、とにかく留学先で生き伸びていくという意思にほかなりません。とにかく、今まで彼らが経験してきた社会とは全く違います。役割分担制が徹底していて、先輩のような存在はありません。日本からの留学生がいたとしても、彼らが新入生の面倒を見てくれるとは限りません。新参の留学生たちは誰を頼ったらいいのは、わからないのです。
結論から言えば、留学生たちは、自立しなければなりません。
日本式に先輩や先生に「よろしくお願いします」といって、頭を下げれば、おおよそうまく行くといういままでの行動パターンは通用しません。「よろしくお願いします」と言えば、「何をですか」という返事が返ってくる、それが英語圏の文化のありようですから。
英語がわからず、授業も理解できず、生活そのものも不安だらけであっても、果たして留学生活はできるのでしょうか。その質問にほとんどの中学、高校留学生たちはYESと答えています。究極まで追い詰められた生徒たちは、そこで初めて「自分で」どうにかするということを学ぶからです。
まず始めに、自分で使えそうな単語や表現を覚えていきます。英語を知っていても、知らなくても模倣することはできます。それを毎日繰り返して、数百の表現をからだに覚え込ませていきます。そのために、留学生はとにかくOutgoing(行動をおこすこと)であることが求められます。
日本で優等生であった生徒は、この時期がとても辛いようです。留学当初は成績が良いはずもなく、今までの自分のプライドが維持できません。持ち前の学習力を発揮して、モーレツな自主学習で挽回しようとしても、そのもとになる英語が不自由ですから、日本のようには勉強はできません。さらには、ボーディングスクールにおいては、勉強時間は明確に決められているので、消灯すぎても部屋で堂々と勉強するなどということはあり得ないことなのです。
つづく