教育異文化 その3 生徒の意見の反映
生徒の意見を反映するということの例証として、ボーディングスクールという組織において最も忙しい人のひとりとして校長先生の奥さんが挙げられます。多くの場合、校長先生が海外訪問に出かけるときに奥さんも同行します。
校長先生の旅の目的は、既存の留学生の家族やOB、OGを訪問して海外からの留学生を増やすことにあります。当然のことながら、校長先生は既存留学生のデータを持参して、お母さんやお父さんに留学生の現情を報告します。ただ、成績表を示して評論するだけではありません。彼の学校での活躍ぶりあるいは改善してほしいところまでを網羅します。その際、秘書役をこなしているのが、校長先生の奥さんであるケースがボーディングスクールの場合、一般的です。
ボーディングスクールはどこでも校長先生は学校敷地内にある公邸で生活することになります。もちろん、家族全員がそこで暮らします。スポーツ、芸術、社会活動、学業で功績のあった生徒たちを、自宅に招き昼食、夕食などを生徒と一緒にして彼らの労をねぎらい、誉めます。一般的にはカジュアルなパーティーで、コーチや担当の先生や家族も招待されます。ボーディングスクールの校長先生の奥さんはご主人の世話、および子どもの世話のみならず、多くの生徒の世話をするので、いつでも大変忙しいのです。
そんなところで生徒たちの率直な意見をしっかりと聞き、必要に応じて学校生活に反映させることも校長先生の大切な仕事です。また、それをきちんと実行するために奥さんも最大限学校生活や授業などに参加しています。
このパターンはボーディングスクールの規模にかかわりなく共通しています。また、校長先生の家族だけでなく、先生の家族の多くが寮で生徒たちと一緒に学校生活を送っています。そして、真夜中に生徒が体調不良を訴えても、自習時間に彼らが質問に来ても先生方は対応します。先生たちにとって、生徒は自分の家族といった認識が無ければ、プライベートと仕事の区切りが明確にできないボーディングスクールライフをやっていけません。
先生および学校職員と生徒との物理的、精神的な距離がきわめて近いのもボーディングスクールの大きな特徴と言えます。そのようなボーディングスクール社会ですから、みな素直になります。先生たちも、教えるからといって、生徒を立場や権威で圧倒することはありません。そのような関係がボーディングスクールにおいては、健全でなく学校存続のためには有益でないと十分に認識しているからです。