教育異文化 その2 右脳・左脳のバランス教育
一般に人の右脳は感覚を司るといわれ、論理的思考は左脳がその役割をすると言われています。日本の受験においては、あきらかに左脳的要素が支配していて、右脳に関してはある特定な分野でしかその能力が試されることはありません。ひらめきや直観力が重んじられる芸術や音楽の世界でさえ、基礎力としてデッサンなど決められた作業における完璧なまでの描写力が日本の受験においては必要不可欠であるわけですから、その人固有の能力表が認められるのは難しいかもしれません。
中学から高校の科目構成や時間の使い方をみても、ボーディングスクールに比較して芸術分野が日本では少ないことが良く解ります。ボーディングスクールでは、規模が大きくなればなるほど、―といっても最大で4学年1000名ほどですが―芸術に関する施設や活動が活発になります。授業時間内に行う音楽や芸術のクラスではなく、午後3時以降の時間を使って、その活動に2時間余り専念できるのです。週末の時間を更に活用すれば、自分が好きなことへの取り組み時間をかなり多くすることができます。
芸術に特化した建物は、そのデザイン、間取り、内装や配色にも創意工夫が生きています。ここでも、生徒の感覚にうったえるような取り組みが感じられます。もちろん、芸術といっても音楽と美術だけではありません。演劇、ミュージカル、写真、陶器、ダンスなど、しっかりとそれぞれのホームベースとなるような施設が学内にはあります。
ボーディングスクールの学習文化においては、左脳も右脳も均等に大切にされていることが良く解ります。そして、人文・歴史の分野でも、生徒の創意工夫による歴史上あるいは、小説、戯曲の主人公などの人物像や歴史パネルを作ることを、単なる作文だけでない課題として、生徒に取り組ませたりもしています。
日本であれば、芸術関連のことをやっている時間があれば、入試問題を一つでも多く解き、単語や漢字を覚えたほうが実用的と言われそうです。また、英語、数学など主要科目の成績が良ければ、音楽や美術の成績が悪くても何ら気にすることもありません。
もし、この状況がボーディングスクールであれば、いくつかの芸術的取り組みも示唆されるかもしれません。隠れた才能を発見するというのがその趣旨です。なぜ、受験と関係ないことをするか、それは生徒のやる気に火をつけることが目的です。
ボーディングスクールの教育は、この意識の点火装置に火をつけることが、生徒たちのやる気を盛り上げて、結果的に成績が伸びるということを熟知しています。