ボーディングスクールの英語授業
ケベック州にあるTABS加盟のボーディングスクールは、Bishop’s College Schoolで7年生(中学校1年生)の英語クラスを聴講しました。先生が用意した本を生徒が読み、その本に書かれている主要人物の一人を取り上げ、その人物になりきって、クラス全員の前でスピーチをするというものでした。クラスの人数は12名です。
本の題名はBombingでなんと広島と長崎に落とされた原子爆弾をテーマにした本です。生徒のスピーチはMy name is Harry Truman. I was born in 1884 ・・・という具合に展開されていきます。当時、原子爆弾作りに携わった主要人物になりきった生徒たちのスピーチの内容を先生がしっかり書き留めています。出来栄えを評価して成績に反映するためです。
生徒のスピーチが終わる度に拍手と聴視者からのコメントなどが入りますが、テーマとかけ離れている私的な会話は、先生が鋭くEnough!というように制します。ひととおりスピーチが終わったところで、私は先生に質問しました。
―このクラスの目的は何ですか
「読解力をつけること、発表することから学びこと、テーマを決めて制作すること、そして生徒がそれらを楽しくできるように導くことです」
―今回のテーマは何ですか
「原子爆弾は落とされるべきであったか否かです。この本のテーマがそれであるのですが、現代の原子力利用ということも視野にいれて、生徒たちにはこの本から将来の自分たちの社会のあり方も考えてもらおうと思っています」
―このクラスに関連する生徒の制作物を少し見せてもらえませんか
「はいどうぞ。(等身大の段ボール紙でつくられた人のかたちをしたものを指さして)あれは、エリザベス女王です。シェイクスピアの時代をテーマにして生徒たちには、主人公を具体的に作り、それについて説明文を書かせています。
―美術のクラスでないのに、英語クラスであのようなものを作らせるのですか
「単なる書き物だけでは、子どもたちは飽きてします。いろいろな情報をリサーチして、そこから自分のオリジナルなものに仕上げる、そしてそれを発表するというプロセスを通じて、子どもたちは、それぞれの作品についての興味や好奇心を満たしていきます。
驚くべき多様性ではないかと思います。手間と時間がかかる国語の授業ですが、まさにそれぞれの生徒がそれぞれの作品を制作し、それに対するコメントもみな独自に考えられています。
中学校1年生のクラスで、原子爆弾と原子力の未来というテーマでの学習。それと高校、大学受験の具体的な接点は、あまり見いだせないように思います。
つづく