浪人はしないアメリカ―ボーディングスクール留学
浪人という教育文化がないアメリカでは、成績が良くない生徒がたとえばボーディングスクールの最高峰、テンスクールズあるいは大学の最高峰、アイビーリーグ校を目指すときはどうするのかということですが、まずは、どこでもいいから、自分を受け入れてくれる学校に入学します。すなわち、浪人して試験の準備に集中するのではなく、進学してそこでの実績を最高に持っていくのです。
それまでの成績は変えられませんが、新たな学校での成績は努力次第でいかようにもなります。そして、学業外の要素、すなわち体育、芸術、音楽、学校活動、社会活動、夏休みの過ごし方なども、過去を振り返らずすべてを刷新するのです。もちろんSSAT、SATで好成績を上げるための努力は言うまでもありません。1年でだめなら2年間努力して、3年目に過去2年間の実績をひっさげて転校に打って出るのです。
日本では、「石の上にも3年」といった定着性は良い価値観ですが、英語圏の文化では、「定着」を良い価値観とする社会的な習慣や文化はないと私は思います。転校、転居、転職などは彼らにとっては当たり前のことです。
余談ですが、ボーディングスクールのアドミッションの人たちも3年から5年くらいでどんどん学校を移ります。実績をあげれば、それを最大に評価してくれるところに移動するというのは彼らの常識です。学校への愛校心はあるのでしょうが、自分を売り込む、そして他のところが、現在のところよりも高く評価し認めてくれることが、彼らのプライドを刺激するのではないでしょうか。あらたなところでのより高いポジションや、報酬、そして待遇など、変化するのが当たり前と考えて学校社会が構成されていると思います。
彼らのいいところは、一つの学校に10年以上の長期にわたっている人もすんなりと受け入れ、「すばらしい」と思えるところです。
恩や義理の体系が希薄な英語圏の社会であるがゆえに、そこで学ぶ留学生たちは、彼らの価値観を認めたうえで、日本の「定着」文化のバランスを考え、上手に使えることが、中等教育機関への留学のとても大きなメリットと言えると思います。
ボーディングスクールと日本の教育システムのうち、入試に視点をあててみました。それぞれに長所、欠点があると思います。これからの教育にあっては、欠点を修正するという方向よりも、良い所をうまく活用して伸ばしていった方が、より効率的であると思います。