日曜コラム 息子の生き方
私の息子は養蜂家です。
社会人となって1年間、養蜂関連の会社で学び、養蜂家として独立しました。
蜂とのかかわりは学生時代、蜜蜂研究会というサークル活動からでした。
果たして、「蜂蜜で食っていけるのか」というのが、親の心配ごとです。
どこのスーパーでも、中国産の安い蜂蜜が売られている中で、
国産蜂蜜は中国産のざっと3倍ほどの価格です。
価格では到底勝つことができません。
どのようにして国産の蜂蜜で中国産に対抗しようというのか。
そもそも、そのようなニッチなマーケットにあえてチャレンジするのは、
一体なぜなのか。
親として突っ込んでいかなければならないところです。
息子は、小さな時から生き物が好きで、カブトムシ、クワガタムシなどを
たくさん飼育していました。
釣りや川遊びなども大好きでした。
田舎にある高校に進学し、「生き物クラブ」に所属し、
学校の前を流れている小さな小川で
ナマズやコイなどを捕まえて、飼育するなど、
とにかく自然のなかで遊んでいれば、時がたつのも忘れるようでした。
生き物好きな息子が仕事にできること、獣医、カブトムシなどの飼育販売、
生物系の教師、農業全般などの選択肢が思い浮かぶ中で、なぜ養蜂なのか、
という質問を息子にすると、
「4000もの蜜蜂を上手に育てると倍、倍に増えていく、それが楽しい」
という答えでした。
それが原点となって、息子は独立した養蜂家を目指しています。
養蜂家の世界も若い人々が参入することは極めて稀なようです。
中国産の安い蜂蜜に市場を奪われた日本の養蜂業界にあえてチャレンジする
人はいないのが現状です。
なぜ中国産がそれほどまで安く生産できるのか。
それを追求していくと、単に人件費が安いということばかりではなく、
蜂の病気等を防ぐための人工的な薬品の投与、
蜂蜜精製の段階で、人為的な不自然な加工、
さらには、砂糖などによる水増しなどがあるようです。
ようするに、蜜蜂プロダクツで最大利益を出せるかに
すべてが集約されているのではないかと思います。
蜂そのものは、人の犠牲になり、利用され、そして生涯を終えます。
蜂蜜を売るという結果に対するこだわりよりも、
「蜂が元気であることに徹底的にこだわれば、彼らから『恵み』が返ってくる。しかし、そのこだわりは命をかけたものでなければならない。自然を相手にすることはそのくらい厳しいものだ。その厳しさに耐えられるのは、彼らに対するすなおな愛情しかない」
私が親としてできるアドバイスは、それしかないと思っています。
息子の養蜂サイトBee Concierge、ご興味のある方はぜひ見てください。