休日コラム 全日本剣道選手権大会
昨日、11月3日、文化の日は、剣道日本一を決める大会、
全日本剣道選手権が東京、九段下の武道館で開かれる日でもあります。
今年のファイナルは警視庁所属内村良一六段(33歳)と
千葉県警小谷明徳五段(28歳)で行われ、内村選手が小手を2本先取して、
決勝戦では珍しく3分ほどで勝負が決まりました。
内村選手の日本一はこれで3度目、彼は年に360日稽古をする、
また稽古の時は誰よりも早く面をつける、などそのモーレツな努力と
真面目さは特筆に値するものがあるようです。
さて、決まり手の小手ですが、テレビのスローモーションを見ると、
2回とも内村選手の剣先は小谷選手の小手を大きく外しています。
本来、小手は手にはめている防具としての小手のくるぶしから
20センチほど腕をカバーしている部位を「打つ」と決まっています。
赤小谷選手:対面内村選手 小谷選手の右肩に内村選手の剣先がかすかに見える
そのルールからすると、今回の小手は当たっていないことになります。
ではどうして、3名の審判は内村選手の「小手あり」としたのでしょうか。
この判定に私は日本の文化の一面を垣間見る気がするのです。
全日本クラスになると剣道の決まり手である、面、小手、の技は
コンマ1、2秒です。審判の先生方は八段という剣道最高位の方々ですが、
まばたきをする間に、竹刀の先の動きを正確に捉えることは不可能でしょう。
すなわち、剣道の「一本」は、勢い、打った時の姿勢、そして打った後の姿勢で
決まると言ってもいいと思います。
剣道の専門用語では、旺盛なる気合、打突の部位と姿勢、残心と言います。
内村選手の小谷選手に対する小手は、実際に打ったところは「小手」では
ありませんでした。しかし、十分な気迫、相手を攻めるその姿勢、そして打突と
その後に体の軸がぶれることのない内村選手のかっこよさは審判の先生方に
「さすが・・」という意識を起こしたにちがいありません。
「かたち」から入る剣道のあり方は、
日本古来のシステムを象徴していないでしょうか。
欧米流の剣道は、フェンシングと思いますが、人間が判定する不正確さを
機械(電気判定)、エペ、サーベル、フルーレに分けることで、
実質的に体重や体格を選別しているように思えます。
また、世界のスポーツとなった柔道も、一本を重んじる日本のやり方から、
厳密な体重別となり、一本という決め技が無くても、技のポイントが
より細かくなるなど、一人歩きをするようになりました。
さて、剣道はこれからどうなるでしょうか。
たとえどのように世界で展開されても、「礼に始まり礼に終わる」という
謙虚さ、すなわち日本の美しさはあってほしいと思います。