中学 高校留学 - 人を信頼する力
日本の高校までの教育は、初等、前期、後期中等教育に分けられて、
それぞれの段階で生徒に達成させるべき点が明示されていますが、
現実的には大学というゴールに向けて、ひたすら学力を鍛えることに
専念されているのではないかと思います。
学力を鍛える過程で努力、忍耐、達成感、適性などを生徒たちは
学びますが、すべては大学入試に直結しなければ、
価値がないと思われても仕方がありません。
十四、五の生徒たちから、留学前に「いい大学に行かないと留学した意味がない」といったコメントを聞くとき、私は留学の大切さを改めて認識まします。
彼らの「いい大学」の定義は一様に入学難易度の高い学校のことで、
自分がそこで何をしたいのかということが、明確な生徒はまずいないからです。
学校への信頼は生徒への気遣いから 少人数授業風景 於Mercersburg Academy, PA
中学、高校留学は、当然大学選択に大きくかかわりますが、
日本にいた時とは勝手が違い、日常の再構築を余儀なくされます。
今までは、自分の能力、特性、個性などは認識しようが、しまいが、
毎日が学校、塾、家庭教師、習い事などで埋められていました。
これらの日常は、いわば受け身でも成り立ちます。むしろ、言われた通りに
行うことで、すべては効率よく回転していきます。
中学、高校留学では、受け身であること、そして
言われたことをしっかりこなすことが留学当初は全くできません。
あまりにも、語学のハンディが大きく、先生の意図さえもが理解できないのです。
それでも、留学生活が成り立ち、留学生も挫折することなく、
留学を継続できるのは、留学生が現地の学校社会を信頼し、
学校という組織も留学生を信頼しているからであると思います。
留学生を指導する先生は、自らの経験から、留学生たちのたくましさを
十分に認識しています。また、留学生自身も独習のみでは、
とてもやっていけないことを理解して、人の力を借りること、それを
上手に利用することを、学んでいきます。
それは、彼らの日本の日常とは別世界であり、その世界を知ることで、
彼らの人間性は成長することは間違えありません。
もし、大学受験にすべてがセットされている教育的価値観から言えば、
人の力を借りたり、それを上手に利用するということは、
目標に対する迂回であるかもしれません。しかし、長い人生を考えれば、
信頼するこころは、一生涯、彼らが活用できる精神のツールとなると思います。