★お母さんの役割4 動じないこと
留学当初の子どもたちの気持ちはとても不安定です。そして、それを正確に周囲の人に説明することができません。したがって、かれらは自らの事情をお母さんに集約して伝えるといっても間違えないと思います。
留学生たちは慣れてしまえば、親への発信情報は「金送れ」であることは、古今東西を問わず、真実であると思います。もちろん、小中高校への留学生に対しては、その都度小出しに送金していては手数料がかさみますから、送金は学校に対して行い、そこに預けたお金を本人が引き出すための許可を得るという段階を踏むことになります。
日常のこまごまとした不満や悩みが本人からお母さんにもたらされなくなれば、ほっておいても子どもたちは、自分にあった自己管理の道を歩むことになります。
問題はそこに到達するまでの初年度、より厳密に言えば留学してから3か月ほどの不安定な時期をどのように乗り切るかということになります。アメリカボーディングスクールの場合は、感謝祭(11月の最終の木曜日を中心として一週間から10日あまり)の休みを上手に乗り切ることができれば、冬休みは無事帰国して正月明けには学校に戻り、春休みは学校のイベントなどに参加するなど、自主性が少しずつですが芽生えます。
最初の3か月の激動期を乗り切るために、情報センターとしてお母さんに最も必要なことは、本人からもたらされるいわばネガティブな情報に動じないことであると思います。親子関係だけでなく、仕事もほかの人間関係も軸がぶれているといろいろなことに翻弄されて、本当のことが見えなくなってしまいます。
では、どうしたらお母さんの軸がぶれずに定まるかということですが、その要点は、的確な情報収集にあると思います。
情報が子どもからしかもたらされなくなるがゆえに、正確かつ客観的な判断ができなくなるケースが多いのです。その象徴が「(わが子が)かわいそう」ということになります。かわいそうの本質は多くの場合が感情的であり、これに支配されると問題の本質を見失い、解決のための段取りが遅れる傾向があります。
留学生を持つお母さんであれば、このかわいそうという意識と戦ったことは一度や二度でないことは明白であると思います。そして、多くのお母さんが、わが子を留学させる前に自分のなかのわが子に対するかわいそうという感情を思い切って取り払っていると思います。
それでも問題が起きたときは、なるべくその情報を信頼できる人とシェアーするのがいいと思います。そのためにコンサルタントが必要なのです。コンサルタントの重要な役割の一つは、問題解決のための正確な情報収集、そして解決への道を拓くということになります。
問題発生→情報収集→検討→情報発信→解決、という作業を繰り返すことで、お母さん自身の留学するわが子に対する軸を作っていくのが、コンサルタントの大きな仕事であると思います。留学当初の「かわいそう」は必ず、本人の人生のための試練に置き換えられ、お母さんのなかでぶれない軸が作り出されると思います。