★お母さんの役割1 食事
小学校の高学年、中学校、そして高校1年生くらいまでの留学は、男親が企画して実行まで結びつけ、実行後はお母さんが子どもの世話をするというパターンが一般的です。家族の多様化にともない、お母さんが男親の役割を担うというケースも、もちろんあります。しかし、その反対のケースはとてもまれと言えます。
何度かブログでも述べていますが、本人が渡航してからの私の仕事のほとんどの部分はお母さんとのコミュニケーションによります。
お母さんと留学している本人とのコミュニケーションが順調であれば、留学している主人公が現地で悩んでいても、問題を抱えていても、おおよそ解決することができるといえます。親子のつながり、絆が物理的な距離には関係ないことを私は何度も実感しています。
今の時期、ボーディングスクールにおいては、留学生はそろそろ春休みのプランを決定しなければいけません。2~3週間の休みですから、当然寮にはいられません。日本からの留学生は帰国するのが一般的ですが、学校が企画するヨーロッパや南米への研修旅行に参加する生徒もいます。また、中学、高校生のための英語学校でTOEFLやSATの勉強をする生徒もいます。あるいは、仲良くなった現地の生徒の家にホームステイする生徒もいます。
留学初年度、初めて迎える春休みに、お母さんが現地に出向くというケースもあります。ある生徒のお母さんから、現地で学校を離れた時の医療保険のことで質問がありました。日本で買った保険であっても、学校を経由して購入した保険であっても、加入の証明書を持っていれば、医療機関は受け入れてくれることを説明しました。そして、お母さんからひとこと、
「どうして、私が現地に行くのか、とあの子が言うのです。だから、(B&Bなので)食事も作らないといけないし・・・と言ったのですが・・・」
(B&B:日本のいわば民宿のようなかたちでホームステイ)
―えっ、それではまるで「飯炊きびと」ではないですか
「まあ、そうですねぇ・・・(笑)」
果たして、食事を作りにはるばるお母さんが海を越えて子どもに会いに行くことが、いいかどうか、これは私が考えることではありません。本人がどうしても、「来なくていい」というのであれば、お母さんは無理にはいけないでしょうし、また、「ご飯を作りに来て」と言われても、はいそうですかとお母さんは現地に行くわけにはいかないでしょう。
いままでの経過があるから、お母さんは「ご飯を作る」という名目で現地に赴くわけで、本当のところ、お母さん心境はとても、とても複雑であることでしょう。
それが日本に帰すよりもよく、B&Bという滞在方法が、今回はベストとお母さんは判断したわけです。
お母さんは忙しいのです。たくさんの顔を持たなければならず、勤務先のある仕事はなくても、主婦という仕事には、休暇もなければ、結果に対する報酬もありません。そして、お母さんしかできない役割を担って、今回、海外まで子どものご飯をつくるためということで、渡航します。