ボーディングスクールが生徒に望むこと ― 3 ほめて伸ばすこと
ほめることはボーディングスクールの文化になっています。無意識といっていいほどに、彼らは生徒の良いところを探そうとします。それは、学校訪問の面接時の質問内容やアドミッションスタッフの言葉からも容易にわかります。
ボーディングスクールの面接では、志望の動機、達成目標、学習およびその他の活動実績といったことを、複数の試験官で志願者に質問するといった状況はありません。
「やあ、はじめまして。私はジョン・スミスです。君の名前は?(タロー・ヤマダです)では、タロー、君と少し話したいのですが、よろしいですか。今日はどこから来ましたか。長旅で疲れてはいないですか。時差ボケは大丈夫ですか。」
このようなとてもざっくばらんな会話でインタビューはスタートします。テンスクールズであっても、ランク1の学校であっても、この状況は変わりません。インタビューする側は、「この生徒の良いところはどのようなところか」ということに集中して双方向の会話のなかから、それを探し当てることに喜びを感じる人々なのです。
また、良いところを伸ばす、認めるという文化は、先生のコメントにも正確に表れます。かなりのことがない限り、先生方のコメントはせいとの良いところをほめることからスタートします。先生が指摘する修正すべき点は一行か二行というのが一般的です。
話がそれますが、ボーディングスクールの場合、一人の先生が受け持つ生徒の数が少ないために、教科ごとに個々の生徒についてコメントできます。ボーディングスクールのみならず、ニュージーランドの場合でも、前期と後期に一年を分けて各教科の先生が個々の生徒についてコメントを書きます。生徒の学習状況についての先生からの意見は英語圏の学校のほうが日本の学校よりもその頻度数が多く、内容も具体的であるといえます。
本題に戻りますが、ボーディングスクールにおいては、スポーツ、アートの分野においても、ほめることから始まります。それが日常のなかで、小さなときから常識になっている現地の生徒にとっては、何の違和感もないと思いますが、日本人生徒にとっては、驚異なのです。故に、「ほめすぎ、大げさ」などと自らを無意識に謙遜して、そのまますなおに受け取らないのが、日本人留学生の現実かもしれません。その彼らも英語力が上達するとともに、喜びや感謝の表現も大げさでなく、表せるようになるのです。
私も留学希望の生徒と接する時は、彼らの良いところを探します。表情、しぐさ、英語力、自己表現力、発言の素直さ、正直さ、言葉づかい、留学においては学習力の数値化である成績も重要なわけですが、その基礎としての人間力がなければ、学習力が生かせるわけがありません。
ボーディングスクールは、ほめて伸ばす、生徒を認めて伸ばすことを徹底して行う教育の場であると思います。