ボーディングスクール留学 異文化のいい加減さ1
異文化と上手につきあうために、私たち日本人にもっとも求められるのが、いい加減さを受け入れることではないかと私は思っています。日本では、事務処理の速さと正確さ、サービスの量と質、約束ごとの遵守などの基準が高く、かつ守ることが当たり前、守れなければ生き残っていけないという考え方が社会にある程度まで浸透していますから、時々、わが子を留学させる親は、英語圏の社会のいい加減さに驚愕します。
学校訪問時のダブルブッキング(二重予約)、交通機関の遅延、メールの返事の遅さ、こちらから言わなければ、ことが始まらないという気遣いのなさ、個別の担当者による責任範囲の狭さと組織的責任者の不明確さなど、日本ではとうてい考えられないような組織のいい加減さに私もよく「いらだち」ます。
あるボーディングスクールを訪問した時、スタッフ対応の不手際さから、予約が入っていないということが明らかである場面がありました。こちらは、予約の日時を書いたメールをプリントアウトしたものを持っていますから、予約に間違えはありません。明らかに学校側のミスですが、生徒のお父さんはその光景を察知して苛立ちを隠せないお母さんに対して、
「アメリカでは、ダブルブッキングなど日常茶飯事だ。いちいちいらいらしていたら、やっていけない。彼らは自分たちのミスは認めているようだから、少し待っていればうまくやってくれるよ」
同感です。
飛行機の整備不良等によるキャンセルや遅延に対しても、アメリカ人は日本人に比べると驚くほど文句も言わず、粛々と長い列をつくって、パニック寸前の担当者をとがめることなく、笑顔で対応しているのには、驚かされます。
ボーディングスクールのスタッフもアメリカ人あるいはその文化を理解する人たちですから、かなり自己都合優先であると私は思います。それが明確に表れるのが、合否発表の時です。良い発表は誰でも積極的に素早く行えますが、悪い発表の場合は物理的な作業であっても、気が進まないというのが一般の人情です。それでも、日本人の場合は、「相手のことを考えて」タイムリーに仕事をこなそうと努力し、また結果も出します。
ところが、こちらがメールと電話でフォローしても音信不通という状況がボーディングスクールでは起こり得ます。不合格になれば、その次の対応を志願者は考えなければなりません。入学までの手順と時間を考えれば「今」何をしなければならないかを、簡単に想定できるはずなのですが、自分だけの判断ではなく、予想外の人の意見を聞くという、いつもと違うことが起こると、とたんに機能不全を起こすことがあります。それでもバケーションには出かけるというのが、英語圏の国々では異常ではありません。
(つづく)