これからの教育10 - 大学入試への道と芸術活動2
<金曜日のブログに続きます>
先週から副教科について述べています。ボーディングスクールでは「副」教科をある特定の生徒には、「主」活動として時間と場所を割いています。もちろん、ボーディングスクールの指導者たちは、副を主にかえることで、子どもたちの学習へのモチベーションを刺激し、高揚するという効果を狙っているわけです。しかし、子どもたちは大人たちが望んだように動くものではありません。そして、自分がこころから求めているものには、大人たちに抑圧されても求めるという反骨の精神もあります。
子どもたちを動かすためには、うそがあってはいけないと思います。生徒が理念を理解し、将来に向けて実現できるようになるためには、それを作った側の人たち自らが理念にみあう行動をすることが絶対に必要であると思います。
英語圏のボーディングスクールでは例外なく副教科活動(芸術・体育)の重要性を述べています。「芸術(あるいはスポーツ)では将来食べていけないから、あまり重視していない」という先生やスタッフはおそらく一人もいないと思います。ボーディングスクールの先生やスタッフは、好きなことを追求するその可能性の先を「仕事」に結びつけて考えてはいません。スポーツも芸術も、小さなこころのよりどころとして、精神的成長の糧として栄養分をたくさん含んでいると彼らは考えています。だから、その環境を生徒のために徹底して整えるようになります。
本題から外れますが、
同様に生徒にとって家代わりの寮、食事にもボーディングスクールはお金と人材をかけていると私は思います。2000年ころまではボーディングスクールの食事は美味しくありませんでした。しかし、ここ数年、食事もかなり改善されました。日本の洋食化に伴って、食べ物、飲み物が問題にされることは、大変少なくなりました。
ボーディングスクールの芸術活動は多様です。音楽の分野では、クラシック、ジャズを中心に、ピアノ、バイオリン、ギターなどの個人レッスンが可能です。日本ではどこの高校にもブラスバンドがありますが、アメリカでは多くのボーディングスクールにオーケストラがあります。
演劇とミュージカルもボーディングスクールにとっては主要な年間行事に組み入れられています。秋と春の年二回公演にこの活動に携わる生徒たちは一所懸命に取り組んでいます。それゆえに、披露の場としてのシアターも映画館のような立派なものをボーディングスクールでは用意しています。
絵画はアトリエ、陶器は焼き釜、ダンスはクラシックもモダンもあり、ダンススタジオもおおよそ設備されています。
学習が中心となる「主教科」の教室に比較して、パフォーマンスが中心となる「副教科」はその施設も多様であり、大学合格のための点数とは直接関係はありませんが、設備にお金がかかります。それを追求してこそ、子どもたちの寮生活をふくめたボーディングスクールでの学習は、緊張と緩和のバランスが保たれて、精神的な成熟度も高まっていくのではないかと私は思います。
スポーツとアート、子どもたちの潜在的な興味を刺激するこの二つの要素を、子どもたちの立場に立って考え、進歩させているボーディングスクールに私は教育の「厚み」を感じます。