日曜コラム 冬過ぎて
3月の下旬、アメリカの東海岸地方は「マイルドな冬」の終わりとはいえ、
雪こそ見られませんでしたが、コネチカット州、
マサチューセッツ州のフリーウェイのそこかしこで、
巨大なつらら群が路側の岩盤を覆うようにしていました。
すこし風が吹くと体に冷たい空気がつき刺さるようで、
春までもう少し時間がかかりそうです。
日本に着いた時に感じたこと、「あったかい」でした。
私は学校訪問時、飛行機に乗るとき、荷物は預けないので、
バッグをかかえ、もう一つのキャスター付き荷物を
ごろごろと押していると、汗ばむくらいでした。
「日本は春か」と浦島太郎の1/1000ほどの体験に
気分がふわふわとしてきます。
日暮里まで成田空港から40分もかからない高速スカイライナーに乗り、
池袋から自宅までいつもの電車で帰るのですが、飛行機を降りてから、
2時間余りで我が家に着きます。
駅で家内が運転する迎えの車を待っている時、とても寒く感じました。
「あれっ、冬に逆戻りか・・・」
考えてみると、成田から川越まで、「外」の移動がほとんどないので、
室内の人工的な春をアメリカの寒いところから帰ってきた私は
感じていたのかもしれません。
しかし、
いつもの日常に戻り、沈丁花の甘い香り、五分咲の桜、
時折の温かい南風、結露のなくなったガラス窓など、
すこし日本を離れている間に春が来たことを感じます。
5時半にはすでに外が明るいので、自然に目覚めも早くなります。
朝の運動の時も、手袋とウィンドブレーカーはいらなくなりつつあります。
運動のスタート時間が少し早まり、ジョギング時間が長くなり、
家に戻ってくる時には、上半身が汗ばむようになりました。
この季節、すこし早いのですが、持統天皇の一首を思います。
「春過ぎて 夏来にけらし白妙の 衣ほすてふ 天の香具山」
自然をみる彼女の元気さがとても好きです。
おそらく、彼女の治世がうまくいって、好調ゆえに成った歌なのでしょう。
初夏の歌だけど、「冬過ぎて 春来にけらし」で、私は元気がでます。
いわんや、アメリカから帰国して、食べ物がおいしく、畳の部屋があり、
自然が豊かな四季の国、やはりこの国は素晴らしいと思います。
豊かな自然のある国は、また自然の災害も豊富です。
このたびの爆弾低気圧に家内は、
「モー、日本って一年中災害だらけよね。台風、大雪、地震、津波、大雨、突風、暮らしにくい国よね」
―そうでもないよ。
朝の時間だったので、ディスカッションには至りませんでしたが、
日本のみで生活していると、人はどうやら天の邪鬼になるようです。
この季節、桜の木の下で暮らしやすくもあることを家内に語る機会を
作りたいと思います。