ボーディングスクール - ESLについて2
80年代の前半、オイルマネーで富を得たイランからの留学生がアメリカの学校に大挙留学しましたが、その頃はボーディングスクールのESLが確立していたとはいえません。その後、日本の経済成長が頂点に達し、中等教育機関であるボーディングスクールにかつてないほどの日本人生徒が留学するようになります。
それまでの日本人のアメリカ中等教育機関への留学は、一年間の交換留学が主流でした。アメリカの公立高校で学ぶのですが、アメリカの政策として外国人受入れを行うプログラムであったために、学校と地域を留学する側が選ぶことはできません。もちろん、受け入れ家庭もすべてボランティアです。滞在する家庭を留学する側が選択することはできません。渡航直前まで学校も滞在する家庭も留学生にはわからないということが当たり前のプログラムです。
交換留学生受け入れ校は、そのほとんどが公立高校のため、当然のことながらESLはありません。それでも、日本人留学生たちは、不慣れな環境で独自に英語を学び、生活に困らない英語力はしっかり身につけました。オン・ザ・ジョブ・トレーニングという英語がありますが、まさに交換留学生たちは、公立高校という現場で生きる知恵を自ら探し、自主的に学習し、他人の家庭で寝食を一年間も共にして、異文化のなかで鍛えられました。
日本で学習した英語知識のみでどのようにして日本人留学生たちは、使える英語を学んだのでしょうか。また、アメリカに移住するアジアや南米からの移民に対して、アメリカの公的教育機関はどのようにして、英語力を身につけさせるのでしょうか。私は80年代にESLがボーディングスクールに広がる原点があり、その原型はアメリカがそれまでに培ってきた、外国人用の英語教育法にあると思います。
アメリカで生み出され、進歩してきた外国人のための英語教育法と、日本で日本人のために明治以来続けられている英語教育法とは全く別のものです。アメリカのそれは、英語を学ぶ人がどんな文化的背景を持っていても対応できるように考えられなければなりません。端的にいえば、欧米からみて、「極東」に位置する日本は、言語面、文化習慣面で英語から最も遠い国の一つです。ヨーロッパ人、南米人が学ぶようには、すんなり英語に入ってゆけないというのが現実と思います。また、彼らと混合で留学生のための英語クラスで学ぶ場合、先生は日本人に合わせて授業を展開しません。
英語がわからないから、留学生のための英語クラスで学習する。そのような機能が学校に備わっているということイコール、日本人留学生にとって「安心」であるとはいえません。
つづく