ボーディングスクール―ESLクラスの実際
中等教育において日本と英語圏の国々に共通している教育の基本は国語力と数学力です。日本の伝統でいえば、「読み書きそろばん」という生活能力と言えると思います。留学生は学習の基礎である読み書きを初年度で急激に進歩させ、二年目に現地の生徒たちと対等なカリキュラム(メインストリーム)に乗るのが理想です。
アメリカのボーディングスクールのなかでESLクラスが体系的に設定されている学校群のうち、入学難易度が高くなればなるほど、三年次にESLクラスは取らないという指導がなされています。ESLクラスというのは、あくまでも留学生の英語力を補い、正規の授業に適応させるための補助クラスであり、ESLクラスそのものが独立して機能するわけではありません。
私は今まで、英語で読むこと、書くことの重要性を繰り返して述べてきましたが、留学前、留学中の生徒の英語を指導すればするほど、痛烈に「英語力」の大切さを感じます。では、その英語力はどのようにしてアメリカで増強されるのでしょう、また体系的に学ばれるのでしょうか。
アメリカ式英語教育法は徹底的なアウトプット力を養うことにあると思います。書くということに関して、多くの学校で留学生にジャーナル(日記)を書くことを義務づけています。これが日本の英語教育との決定的に違います。留学生にとって、日々身のまわりで起こることを英語で書くという作業はとても大変なことです。とにかく、今まで日本語ですら長文を書くという経験がない中で、いきなり「英語で毎日、日記をつけなさい」と言われるわけですから、留学生へのプレッシャーと精神的負担は大きいでしょうが、アウトプットを毎日繰り返しているうちに、書くことへの抵抗をなくして、英語力を身につけるわけです。
読むということに関しても、日本のように一日10行、20行の英文を読解することが中心に行われるわけではありません。「20-30ページ」の短編小説を次の時間までに「読んできなさい」と言われるわけですから、留学生のはじめの三カ月くらいは、「あいた口がふさがらない」状態で過ぎてゆくと思います。
留学の現場においては、英文法を学んでいる暇などないというのが、ESLクラスの先生および生徒の本音であると思います。ゆえに、英語の基礎は日本で身につけてゆくことがとても大切なのです。難しい文法や例外について学ぶ必要はなく、英語の特徴である、文型の理解、時間の概念、仮定法の考え方などを理解しておけば、留学初期に大いに役立ちます。