剣道初稽古
毎年、一月二日に行われる剣道の初稽古には、道場を卒業していった
若者が参加します。英語圏の学校文化でいえば、ホームカミングです。
現在都内の私立大学二年生、剣道部レギュラーとして活躍している
ゲンキ君が久々に道場にやってきました。
彼がまだ中学生だったころ、道場で稽古した時のことを思い出します。
彼は、私の母校である埼玉県立松山高校に進学し、
そこで剣道部監督、伊与田先生と出合います。
伊与田さんは、私と同い年で共に松高の卒業生です。
当時、私は松高剣道部主将の岡野君とクラスメートで、
伊与田さんとも岡野君を通じて知っていました。
高校時代に三段を取得した伊与田さんはその後、教職に進み、
多くの高校剣道部を優勝に導いた名監督として、
埼玉県の高校剣道界では、有名なようです。
高校時代、伊与田君、岡野君は松高剣道部のリーダーであり、
二人とも、剣道を愛し続けて、後輩の育成にあたっています。
「伊与田名監督に率いられた剣道部は強くなる」とゲンキ君のお母さんは
言いました。
「名監督」とは何かと思いめぐらします。
おそらく、二つの要素を兼ね備えた人なのだと思います。
一つは、剣道に対する愛、そしてもう一つは教え子に対する愛です。
今、多くの後輩たちの尊敬を集めている伊与田先生ですが、
10代の彼は、ひょうきんですばしこい性質であった印象があります。
そんな彼が、五十年を経て、剣道を通じて、多くの人間を育成されたことを
おもう時、そこに「人生」を感じます。
また、運動部とは、まったく対極にあった私が、今になって
「剣道」を通じて、あらたな知己を得ることも、「人生」のご縁です。
ゲンキ君が小学生低学年のころ、厳寒の時期も、夏の猛暑の時期も、
彼を道場に送迎し、じっと稽古の間、わが子を見つめ続けたお母さんに
私は伊与田君とは異質ですが、「愛」の根源のようなものを感じます。
大学生のゲンキ君と小学校六年生、わが道場の期待の星である、
ケンタ君の立ち合いを見ていると、剣道が一つのアートのようです。
面、小手、胴など、二人とも遠間からすっ飛ぶ打ちあいをします。
また、喉元に剣先をつけたまま、中心をとりあって、近間から
面に行くと思いきや、胴に取って代わる素早さと身のこなし、
ぐぐっと正眼の構えから、小手を取りに行く動きは、まるで早回しの
映像を見ているようです。
若いエネルギーの発散に自分のこころも洗われる思いがします。
正月の三ヶ日が、あっという間に過ぎようとしています。
今日は、家族で川越大師、喜多院に初詣に行きました。
正月気分も今日でスイッチを切り替え、そろそろレギュラーモードになります。
新たな年、あらなた一年が始まります。