ボーディングスクールの特徴-科学教育
アメリカ、マサチューセッツ州にあるNorthfield Mount Hermon School(NMH)の科学教育部からの手紙をもとに、その教育概要を考えてみたいと思います。彼らの教育の目的は、物理、生物、化学、環境科学に関する基本の学習とその成果を実験や日々の生活に応用できるようにすることとあります。
導入クラスにおいては、「自然」の原理を理解するうえで必要な概念を学び、生徒たちの問題分析力と解決力を伸ばすことに重点が置かれます。高校二年、三年では物理、生物、化学、環境科学の学科においてAPクラス(上級クラス)が用意され、その学習内容は大学レベルに匹敵するものです。
上記四分野の学科から、細分化された科目の選択が可能です。それらの科目には、人体解剖学(human anatomy)、physiology(生理学)、遺伝学(genetics)、倫理学(ethics)、天文学(astronomy)、植物学(botany)、地学(geology)などがあります。それらすべてのクラスは教室での学習のみでなく、実験や実習つきです。実験、実習を通じて、生徒たちの観察力、計測力の向上を目指します。
それぞれの科目には、自分でテーマを決めて取り組む研究(リサーチ)課題があります。その成果は他校と合同で行われる科学シンポジウムで発表の機会が与えられます。
リサーチの具体例を示します。
ベッカ・レズリー先生の環境科学クラスの生徒たちは、ニュージーランドを訪問し、文化がどのように環境に作用し、人々やエコに対する考え方を形成するかを研究しました。
物理の上級クラスの生徒たちは、ミニ冷蔵庫の電気消費効率を研究し、3年前に置き換えられた当校の冷蔵庫が6万ドル以上の電気代を節約したとの発表を行いました。
天文学を教えているヒューズ・パック先生とその生徒たちは、全国規模で行われた「危険な遊星探しプロジェクト」に参加して、地球周辺の4つの遊星を発見しました。
上記NMHからのメッセージは、おおよそアメリカボーディングスクールに共通する「科学(理科)分野」における目的であり、選択可能な科目であり、学習の内容です。多彩なプロジェクトはすべてひとクラス(10人~15人)単位で先生の指導のもとに行われます。研究課題のための訪問旅行はすべてオプションで、行く先は国内に限定されることはありません。
マサチューセッツ州にあるNMHはランク4の進学校として、人気のボーディングスクールです。この科学部門の先生からのメッセージには、大学進学に関する記述は一切ありません。自然科学分野における生徒たちの好奇心を刺激し、彼らの自然に対する興味を増幅させ、広範に知識と情報収集の方法を伝えてゆくことで、自発的に高等教育機関への関心を高めてゆくというのが、生徒中心のボーディングスクールの考え方を象徴しているように思います。