義務教育時における留学
義務教育を終了せずに、留学をすることは可能です。しかし、日本ではその事例が極端に少ないため、私立、公立を問わず小学校や中学校は、どのように対応して良いのかわからないというのが現実です。日本のおいては、学校を転出、転入する場合、なるべく日をあけずに移動することになっているため、たとえば、中学校2年の9月に留学することが決まったとして、1年生を終えて、4月から8月まで準備のため日本にいながら、自主的に勉強するということがありえないこととしてとらえられるようです。
また、日本では次の教育機関へ進学するため受験をする時に卒業証明書が、成績証明書とは別に必要となります。それゆえに一般には「日本の」小学校、中学校を卒業していないということは、資格的には日本の高校や大学の受験資格がないのではないかという不安があるようです。実際は、帰国子女の現実に見られるように、世界のどこで教育を受けたとしても、義務教育期間中であれば、日本の公立教育機関は受け入れを、拒むことはありません。義務教育とは、教育を受ける義務とともに、教育を与える義務も当然のことながらあります。また、高校大学でも、海外で教育を終えた生徒の受け入れは積極的に行うようになっています。
英語圏においては、義務教育終了年齢は16歳です。したがって公立の後期中等教育機関への入学の際に試験はありません。アメリカの場合、ハイスクール(高校)は通常、日本の中学校3年生にあたる9年生から12年生までの4年間です。16歳を過ぎれば、義務教育を終了するので、本人の意思で学校をやめても良いわけですが、そのような生徒は多くはありません。
ニュージーランド、オーストラリアの場合は、16歳まで高校で勉強しますが、17歳になると学校を去って仕事に就くという生徒は珍しくはありません。イギリス系の教育を踏襲するニュージーランド、オーストラリアでは、母国と同様に卒業証明書という教育における慣習がありません。イギリスでは、高校時代の最後の2年間は大学進学を見据えて、自分が専攻する分野に特化した科目(3科目)のみを学習するシステムになっています。
これからの教育を考えた場合、旧来の概念をかなりのスピードで変えてゆかないと、グローバル化への対応が難しいことは明白です。義務教育ということにおいても、「資格」という概念が先行すると、資格を取れなかった場合をリスクを考えて行動するのが、私たちの常識です。しかし、それは、国内での教育システムにおいてのみ適応されることです。
英語圏に限って言えば、イギリス系にしても、アメリカ系の教育にしても、学習の事実を留学先校が証明しさえすれば、それを受け入れない日本の教育機関はありません。
大切なことは、システム、慣習の違いを明確に説明し、文書化できることです。私の経験では、英語圏で通常どおり学習を終了した生徒が、日本の大学受験を「資格がない」と判定された例はありません。