学校訪問 - あるお母さんの決断
忙しくて、思ったようには家族に時間を割けないお母さんが
現代にはたくさんいると思います。
子どもの成長を思うにつけ、「どうしよう」と思いめぐらしながら、
日々が矢のように過ぎてゆくとため息をついている人も
数えきれないくらいいると思います。
師走の土曜日、とても忙しいお母さんが、わが子2人と
ご自身のお母さんと一緒にオフィスに来てくれました。
都内住みではないので、気軽に来社というわけにはいきません。
4月の息子の渡航を前に、これからの予定の確認、重要事項の解説のために、
電話とメールのやり取りだけでなくて、来ていただくことにしました。
実際にお会いして、お話しすると、雑談のなかにとても大切な、
あるいはこれからの参考になるような話題が飛び出すものです。
日々、仕事で奔走されているお母さんにとり、わが子の留学に際して、
海外まで学校を見にゆく時間が取れそうにありませんでした。
お母さんは、躊躇なく、ご自身のお母さんに学校の見学を依頼します。
「実は、家族の中で祖母が息子の留学に一番反対していたんです」
―それで、おばあちゃんにあえて学校訪問に行ってもらったのですか
「ええ、そしたらきっと賛成してくれると思って・・・」
―結果はどうでしたか
「現地から、電話がありました。『ここなら大丈夫』だって」
―はい、私にとって、志願者とそのおばあちゃんとの学校訪問は初めての体験でしたが、おばあちゃんの元気さには、とても感心しました。また、ニュージーランドを観光でなく、たくさん見てもらうことで、お孫さんの留学についても、おばあちゃんなりのはっきりした意見をお持ちになったと思います。
「私が忙しくて、1週間は日本を空けられなかったのと、息子をいろいろと面倒みてくれる母に安心してもらおうと思い、現地に行ってもらうことにしたのですが、私の予測どおり、母はあの旅以降、息子の留学に反対しなくなりました。」
―私にとっては、本人のことをよりよく知るためにも良い旅でした。助手席に乗った彼と「人生論」も語りましたよ。何になりたいかということではなく、お母さんが忙しいことに対して、彼が何を思い、高校生になるにあたり、どんなように生きてゆきたいかなど、彼も語っていました。
「えっ、ほんとですか。信じられません。息子と人生論なんて話したことないですから。でも、嬉しいです。息子もそれなり考えていることがわかって」
―子どもは親の背中をみて育つと言います。昔はこの言葉、私は信じていませんでしたが、子どもが社会に出るようになって、信じられるようになりました。親が一所懸命に仕事をすることは、子どもに対するとても重要な教育のひとつです。
「そうですね。息子には、これからの時代、英語をしっかり身につけて、あとは生きる力を留学で磨いてほしいと思っています。なにより、現地では楽しくやってほしい。生活を楽しんでほしいと思っています」
―彼は、自然にそうするでしょう。初めの半年くらいはとても苦労すると思いますが、支えてあげてください。私も応援します。
「はい、スカイプ、携帯電話などつかえば、連絡は取れますから、親としてできるだけの援助はします」
それぞれ家族には独自の文化があると私は思っています。
そして、その文化の特性を最大限に生かすこと、それが私の仕事
の大きな部分と思います。
私の口癖、「仕事の半分はお母さん(あるいはお父さん)との
コミュニケーションです」が家族文化の理解を象徴していると
思っています。