日曜コラム ヤマを耕す
埼玉にある我が家から25キロほど離れた田園地帯に、
私たちがヤマと呼んでいる場所があります。
ヤマは南に向かいタテ10メートル、横20メートル程の広さがあります。
目の前、数百メートルは田んぼで、その先は埼玉丘陵森林公園です。
バブル期頃、「この地域が開発される」という情報をどこかから
家内が仕入れてきました。
私たちは、家内の岩手のお兄さんにも声をかけて、この土地を
手に入れたのですが、結局この地域の開発はバブル崩壊とともに消えました。
そもそも森林として安く買ったので、家は建ちません。
結局、私たちは20年近くその土地に足を運ぶこともありませんでした。
電気会社から、電線に木の枝がかかるので伐採してほしいという
依頼が来たのは去年の春ころでした。
ヤマまでの道順も忘れるほどに時が経ち、そこにたどり着くと
土地全体が篠竹で埋め尽くされていました。丈は3メートルほどです。
その上を蔦が這い、ところどころに杉や桜が10センチほどの幹までに成長し、
なんと5メートルはゆうにある太さ25センチあまりのケヤキのような
木の枝が電線に接触していました。
当初は平坦できちんと整備された土地がまさに「ヤマ」に変貌していました。
去年の夏、家族四人でこの小さなヤマの開墾が始まりました。
レンタルでチェーンソーと草払い機を借りて、とりあえず木を切り、
篠竹を薙ぎにかかりました。
1回ではとても終わらないので、草払い機を買って、ヤマを元通りに
する作業にかかったのですが、20年の放置のつけはとても大きいものでした。
今年になり、二男が就職して家を離れ、長男も転勤予定で、
ヤマを耕すのは、ついに私と家内になりそうです。
「おじいさんはヤマに柴刈りに、おばあさんは川に洗濯に・・・」が、
かたちを変えてリアルになりそうな雰囲気です。
家内は、「子どもが小さい時、ここに来ればよかったね・・・」と言いました。
目の前の田んぼと小さな川、そして森林公園、数キロゆけば、何でもそろう
郊外モールもあります。
一度やりだすと、かなりのめり込む私ですが、このヤマの開墾は
時間をかけて、のんびりすることにします。
一つには、篠竹と蔦の地下のネットワークは相当なもので、
スコップでは掘り返せず、なまくらな鍬では刃が立たないのです。
1平米を耕すのに1時間くらいはかかると思います。
また、薙ぎった篠竹、蔦、雑草などの処分も問題です。
トラックをレンタルして処理場に運ぶこも考えましたが、
「自然」が豊富なヤマだからもっと自然にやればいいと達観しています。
今、少しずつ、うづ高く積んである篠竹や枯れ草をヤマに穴を掘って、
そこで燃やしています。家内は、「焼き芋をしよう」と意気込んでいます。
バーベキュー、キャンプなど、結構楽しめるかもしれません。
「子どもが小さい時に来ればよかったね」の意味をかみしめています。
私たち自身が子どもになれば、良いのかもしれません。