TOEICとTOEFLについて
TOEICというと社会人のための英語力試験として日本では
企業のみならず大学入試などでも採用される公的な試験ですが、
アメリカの現状ではTOEICを評価しない大学が増加しつつあります。
カリフォルニア大学バークレー校では、TOEICを廃止して、
TOEFLないしはIELTSのスコアを社会人のための
特別講座に入学するための基準としたそうです。
これは十分に納得できることだと思います。
IELTSはTOEFLに対抗して、イギリスで作られた英語の試験です。
アメリカにあるUCバークレーがアメリカで作られたTOEICを
採用せず、あえてイギリス発祥のIELTSを認めるというところに、
学問の府の「フェアーさ」を私は感じています。
TOEFLもIELTSもそのスコアは受験者の大学で使える英語力を
正確に反映することができるのです。
しかし、TOEICではそうはいかないという大学での現場からの
クレームが相次ぎ、UCバークレーはTOEICの不採用に
踏み切ったのだと容易に想像できます。
TOEICという試験を一言でいえば、単語や文法を知っているかどうかを
問ういわゆる暗記モノの試験であり、TOEFLのように英語的思考力や要点を
把握する力をTOEICで問うているとは私には思えません。
現在、私の知る限りでは、TOEICを採用している国は日本だけで、
他の国ではTOEICのことを耳にすることはありません。
現在のTOEFLが昔の紙TOEFL(Paper based TOEFL)から
CBT(Computer based TOEFL)に変わり、さらにそこからIBT
(Internet based TOEFL)になったのは、大学の現場からの声を
反映した結果です。紙TOEFLで高得点をあげるアジアからの留学生が、
大学生として受け入れられても、英語が話せず、ディスカッションにも
参加できない、また、小論文的な文章も書けない。これではダメだという
ことで、TOEFLは使える英語力を計るテストとして改良されてきました。
TOEICという試験は、私には紙TOEFLのやき直しとしか思えません。
いわば80年代のしろものです。そして、それが日本でしか使われていない。
どうしてそうなるのでしょう。
英語圏の人々の思考回路でいえば、大学でしっかり読み書きを学習して
社会で通用できるレベルに達するということになります。
しかし、TOEICを作った人はなぜ、TOEFLという進化した英語試験が
あるにもかかわらず、TOEICに逆行してしまったのか、私にはとても
不思議に思えます。
おそらく、紙TOEFLが廃止されCBTになった時に、困ったのは
日本の企業だったのではないでしょうか。
それほど英語が読めなくてもいい、書けなくてもいい、仕事で使う
英語は、ある程度の単語力と通じるに足る文法力だけでいいではないかと
誰かが発想し、TOEFL制作会社、ETC(English Testing Service)に紙TOEFLに
似せて社会人用の英語テスト制作を依頼したのではないでしょうか。
おそらく、これから社会人の英語研修は増加するでしょうが、
TOEICは時代遅れと言わざるを得ません。
英語をビジネスのコミュニケーションツールとするのであれば、
IBTで得点できる英語力の「品格」を日本のビジネスマンには
持ってほしいと思っています。