USボーディングスクールの特徴-数学力について
「数学は驚くほど簡単」と、ほとんどの日本人留学生諸君が言います。相当に数学が嫌いな生徒でも、英語圏の国々では生活で困らない程度の数学力を中等教育での必須としているようですから、日本の生徒たちは現地生徒たちの数学力のなさを嘲笑したりもします。読ませる、書かせることに比較すると、計算させるという分野では、英語圏の人々は極めて楽観的といえます。
問題は一般教養としての数学力ではなく、その分野を追求したい生徒をどのように教育するかということになると思います。ご承知のように、アメリカが、理数系の象徴のようなコンピュータのソフトを支配しているのは明らかであり、医学、工学系でも多大な業績をあげていますし、これからもこの状況は変わらないと思います。なぜ、一般人のための「算数的」教育と専門特化された分野の格差がこれほどにあるのでしょうか。
ジュニアボーティングスクールにおいては、数学が優秀であるが故に、その分野のみ高校で授業を受けているという話は聞きませんが、ハイスクールレベルになると、数学が得意な生徒は物理的条件さえ許せば、大学で授業を取ることは十分に可能です。プリンストン大学にほど近い、Hun School、Lawrenceville Academyなどでは、自然にプリンストン大学の機能を十分に活用していますし、ミネソタ州のSt. John’s Preparatory Schoolも、お隣のSt. John’s Universityの機能を使うのは当たり前とされています。
Working for his/her potentialと彼らは良く言います。能力を発揮すると言った意味ですが、平均的能力をまんべんなく発揮できるよりも、より特定の分野で、より優れた能力を発揮することを彼らは目指していると思うのです。
世の中にでて、どれだけ加減乗除以外の数学的教養が必要でしょうか、関数や統計に関する数学は専門家以外は使いません。それなのに、なぜ一般教養において高等数学の知識を生徒は一律に学ばなければならないのでしょうか。明治の文明開化の時代であれば、工学技術をあまねく国民にという流れから、解らないでもないですが、現代においては、パソコン技術、ワードやエクセルの使い方などを子どもたちに教え込んだほうが、彼らが求めている知識となり、また感謝されると思います。
理数系に関して、私が強く感じる英語圏と日本の違いは、本音と建前です。日本では、集団における均一性をとても大切にします。これはバブル崩壊以前、日本が頂点に上り詰めるまでは、必要だった組織論であると思います。しかし、そのスタンダードが崩壊してしまった今、過去の基準を踏襲する必要はないと思います。故に、理数系の必須科目とその内容について、もう少しドラスティックな変化があっても良いはずです。