迷える青年-2
<前日のブログに続きます>
ニュージーランドに彼が行ったのは今年の夏休み、8月中ごろでした。
現地では50年ぶりに北島、オークランドに雪が降るという
異常気象もありましたが、私は出張先の南島から彼に電話をしました。
日本ではこの青年とはほとんどまともな会話はしていません。
私の質問にも短い答えしか返ってきません。
それが故に私は、彼のことが心配でした。
確かに彼の兄が言うとおり、留学は、自分で決めなければいけません。
行かされて、現地に行ってから「ぐずぐず言う」ということが、
留学を体験している兄にしてみれば、耐えられないくらいに
潔くないことなのです。
―まさか、そこまでこの青年は頼りなくはないだろう・・・。
私は勝手にそのように思っています。
―しかし、気になるなあ。食事食べているだろうか。英語通じているだろうか。東京と違って何もないところで、自暴自棄になっていないだろうか・・・。
青年がニュージーランドに到着して2-3日後に
彼のホームステイ先に電話をしました。
―もしもし、S君、どう元気でやってる。
「あっ、斉藤さんですか、ここいいとこですね」
―バスケ、学校でやれてる。
「ええ、適当にやってますよ、みんな仲良くしてくれるし」
―安心したよ。英語もできずめそめそしてやしないかと思ってね。
「斉藤さん、大丈夫ですよ。オレ、自分で決めてここに来たんすから」
―そうだよね。君とは日本でほとんど話もしてなかったし、今日は話せてよかった。
「斉藤さん、いまどこっすか」
―ニュージーランドのロトルア、静かですごくいいところだ。
「この学校は改築中なんで、校舎せまいし、施設もちょっとふるいし、斉藤さんどこかいい学校ないっすか」
―たくさんあるから心配ない。日本でまた話そう。
「はい、電話ありがとうございました」
青年の饒舌さに私は驚きました。
彼とまともな会話ができたことがうれしくもありました。
あっという間に2週間が過ぎました。
その間に、2回ニュージーランドから彼の写真が送られてきました。
羊と一緒に撮ったもの、農園をバギーで移動しているところ、
公園でのバーベキューパーティーなど、とても楽しそうな様子です。
帰国して1ヶ月以上経ちました。2学期も始まり、彼はどうするのかと
思っていると、留学を考えている友達と一緒に来ると唐突な電話が
彼からありました。
彼の友達はアメリカを希望し、彼も兄の卒業した学校に入りたいようでした。
つづく