USボーディングスクール-アート活動について
日本の場合、中学高校時代のアートというと、音楽、絵画が正課の授業として選択可能でその他のアート、たとえば写真、演劇、陶芸、ダンスなどはクラブ活動としてはあるけれども、学校のカリキュラムには通常、組み込まれていません。音楽にしても、音楽専門の学校に行かない限り、学校単位でオーケストラを組織しているところは多くはありません。絵画もそれを専門とする数少ない学校に行かない限り、油絵、水彩画、水墨画などが学べる学校はまれだと思います。
日本の中等教育におけるアート、そのなかで音楽と絵画については専門特化してその道の大学に進むために徹底して訓練をする。それ以外のアートについては、好きな生徒が集まって自主的におこない、学校はそのスペースを提供する程度ではないかと思います。
これから伸びる可能性が高い、コンピュータを使ったさまざまな分野のアートデザイン、フォトグラフィー(写真)などは、次の段階の専門学校の領域であり、普通科の中学高校においては、正規の授業をこなすのに精いっぱいで、「趣味」の分野に手間暇かけていられないというのが教育現場の現実のように思えます。
アメリカのボーディングスクールにおいては、どの学校でも「アート」の重要性を強調します。そして、音楽、絵画、写真、演劇、陶芸、ダンス、コンピュータデザインなど、生徒が興味を示すであろうアート関連の設備と教師が充実しています。その象徴がアートすべてを取り扱う建物、アートセンターです。もちろん、すべてのボーディングスクールがアートセンターという独立した建物を備えているわけではありませんが、サイエンスセンター(理数系校舎あるいは棟)、ヒューマニティーズ(人文系)、アートビルディングと規模の大小はあっても、その機能は独立しています。
生徒数が300人を超えるボーディングスクールには、当り前のようにオーケストラが生徒によって編成され、活動しています。絵画、陶芸、彫刻など生徒の作品を恒に陳列したり、発表したりするギャラリー的スペースもあることが当然なのがボーディングスクールです。
ボーディングスクールでは、アートは選択制です。生徒に「芸術」を強制することはありません。しかし、そのなかでアートヒストリーは必須としているところがたくさんあります。芸術がどのようにして進歩してきたか、その基本だけは知っておきなさいというのが彼らの教育の基本にあると思います。
広い分野から、自分の興味に合ったものを選び出し、それをたとえ専門的にでなくても、学習したり追及したりできる、それがボーディングスクールのアート教育の実際です。