USボーディングスクール ― 施設は誰のために
アメリカのボーディングスクールは一つとして類型的な学校はなく、それぞれが個性的です。しかし、TABSに所属する300余りのボーディングスクールには明らかに共通点があります。体育、芸術に関係する施設の充実度と学校の入学難易度はおおよそ合致すると私は考えます。
まず、体育関連施設については、年中使えるプールがあるかどうか、北米東海岸地方であれば、アイススケートリンクがあるか、冬季の体育活動を支えるジムが充実しているかどうか、フィットネス関連の機械(ランニングマシン、ローイングマシンなど)がいつでも使える状態にあるかどうか、サッカーフィールド、ベースボールフィールド、フットボールフィールドに加えて、屋外に人工芝の多目的グランドがあるかどうか、テニスコートの面数など、私は学校訪問を重ねるに従って、自然にこのようなところに目がゆきます。
芸術面においては、まず初めにアートセンターが独立した建物としてあるかどうか、演劇を行うシアターの劇場としての充実度、生徒の作品紹介と陳列状況、ポッタリー(陶芸)機器の充実度。音楽の分野においては、オーケストラがあるかどうか、楽器の個人授業は充実しているかどうか、学校備え付けの楽器がいつも使える状態で保たれているかどうかなどを見ています。
寮施設においては、シャワー室、トイレなどが清潔であるかどうか、各自の部屋はどのボーディングスクールも「きれい」とは言えませんが、寮生が集まるラウンジがきれいかどうか、建物全体が生徒が快適に生活できるように維持されているかどうかなど確認します。
テンスクールズをはじめとして、レベル4以上の学校は、驚くほどに施設が新しく、コンピュータなども新しいものを使っています。学校の敷地はあきれるほどに広いので、寮の新設、サイエンス関連の建物の新設、シアターの新設など「アンダーコンストラクション」は当たり前です。
私は日本の中学高校は、ボーディングスクールほどには詳しくありませんが、体育と芸術関連の施設にどれほど力を入れているか、またそれらが「ハコ」ではなく、生徒たちがどれだけ便利に利用しているかということを考えます。
世界から注目されるテンスクールズと言われるボーディングスクールは、高校というよりも総合大学的、施設と設備を誇り、勉強だけではなく、体育と芸術施設がそこで生活する子供たちにより日々活発に使われているのです。
入学難易度が3以下の学校も子どもたちのために施設を良くしよう、使い勝手の良いものに変えてゆこうという気持ちが感じられます。寮設備を整えたら、こんどはプールができる。その前に、シアターの再建が先だなどと、学校経営者の人たちは話しているのではないでしょうか。
知育、芸術、体育いずれも10代の子どもたちにとっては、興味のある分野に違いないと私は思います。それを刺激することで、彼らは全く新しい自分を発見するに違いない。そんな思いをこめて、明日からの学校訪問にあたりたく思います。