1年間の留学について
中学、高校時代に1年間の期間限定留学を最大限、有効に活用するための条件を考えてみました。
1年間留学の目的とするところですが、英語習得があります。英語力を獲得するために留学した本人がどれだけ努力をしたか、それが基準となると思います。当然のことながら、1年間の留学で一般生活レベルの英会話力は身につきます。しかし、それを獲得するために、「努力」はそれほど必要ありません。そして、1年留学後に獲得した生活レベルの英語力を維持するための努力をしないと、自然と消滅してしまいます。
私は1年間留学の場合、なるべくたくさんの英語を読み、なるべくたくさん書くことを留学生にアドバイスします。読む、書くという作業は、本人の明確な意思と努力がなければできません。もちろん、1年で読解力も文書力も完成はしませんが、努力の量が多ければ多いほど、その後に長くその力が蓄積されると思います。
異文化体験による生きる力の習得については、「精神的自立」とも言い換えられると思いますが、英語力はテストでどれくらいできるようになったかを計ることができますが、本人の人間的成長はテストすることはできません。では、何をもって精神的に自立したと言えるのでしょう。簡単に言えば、
・感謝の気持ちがあり、表現できるか
・フェアーな自己主張ができるか
・相手を認められるか
当然のことながら、このような本人の精神活動を身近で認識できるのは、家族です。本人と接することが多い、お母さんが一番敏感に留学したわが子の「変化」を実感できるのではないかと思います。お母さん側からの意見としては、
・「ありがとう」と言うようになった
・引っ込み思案でなくなった
・性格があかるくなった
といった意見が短期・長期の留学生のお母さんからの総合的な意見です。私は「生きる力」や「自立」といった子どもたちの精神活動にも、それらを成長させる基準があると思っています。留学生たちが異文化のいわば孤立無援の環境においてどれだけ自分から努力したかによってそれは計られると思います。気軽に家でも「ありがとう」と言えるようになった、彼らの意識の裏に、どれだけの苦労があったことでしょう。自分の意見がなく、あまりモノ言わないわが子が、積極的になり、意見を言うようになるという背景にどんな生活があったのでしょうか。
与えられた環境や知識ではなく、自らが切り開いた環境や求めた知識は、誰でも大切にしたいし、長く使いたいと思うのではないでしょうか。留学というのは、期間の長短にかかわらず、そのようなきっかけを提供してくれます。そして、それを本人がどのように受け止めるかで、
子どもたちの人間性があらたに形成されると私は思っています。
できれば、小さなうちから、異文化に触れさせてあげたい。小学校の低学年までは、親と一緒に、高学年になってからサマースクールなどで、中学校以上はまとまった期間数カ月以上。それらの異文化体験が彼らの第2の人格を形成するための肥沃な精神土壌を提供してくれると私は信じています。