スロー文明 → ゼロからの出発4
学校訪問の際、親からの質問で最も多いのが、
現地の日本人生徒に対して、
「いつ留学したのですか」
「留学した時の英語力はどのくらいありましたか」
ということです。私の知る限り、留学時に英語が話せたと
答えた留学生は一人もいません。誰もが、「英語はほとんど
話せませんでした」と答えます。
それを聞いて、お母さんは安心します。それなら
「うちの子も大丈夫」となるかと思うと、そうでもないのです。
「うちの子は、引っ込み思案だから・・・」、
「欲がないし、積極的でもないしね」
「ひとはひと、うちはうち」
「あの日本からの留学生は勉強やりそうだから・・・」
「スポーツ、音楽などができたといってたから・・・」
などなど、一般的には謙遜のオンパレードです。
留学がゼロからの出発という概念の考えるとき、
私は家族全体を包括したいと思っています。
現地に行って、本人がゼロから出発するのは、
あたりまえですが、それを受け止めるお母さんもゼロに戻らないと、
本人の伸びの足を引っ張ることにもなりかねません。
親がゼロに戻るということは、一言でいえば子どもに対する
見方を変えるということです。
留学したらわが子は家にはいなくなります。
海の向こうでのわが子の生活ぶりは、想像するしかありません。
毎日の食べ物、友達付き合い、土日の過ごし方、そして
日々の学習など、他人に任せたわけですから、
できればなるべく日本からの発信は避けたほうが良いのです。
では、「本人から来た場合は」となります。
そこで原点に戻ってもらいたのです。
原点とは、今までの本人の既成概念をゼロに戻すということです。
そして、謙遜していたわが子への見方もノーマルモードに
戻すということです。
成績、授業での様子などは、学校から情報がもたらされますが、
その内容のほめられるところを探すのが、私の役割であり、
それを受けて、本人をほめるのが親の役割であると私は思います。
英語力は、ゼロから出発しているわけですから、どんな進歩・進展も
賞賛に値します。また、留学生本人がほめられて、
いちばんうれしい相手は親です。
「そんなことありません」と親子で思っているとすれば、
留学を期に、原点に戻ってください。
わが子の成長過程でのあの嬉しい気持ちを思い出してください。
日々の出来事への不満や愚痴など、本人からたくさんの情報が
もたらされる場合は、大人の原点で接してください。
留学するということは、精神の自立を認めることですから、
日常の不満は大人としての目線で考えるべきだと思います。
そっけない先生や友達など、異文化ゆえに、本人の精神的
消化不良がその原因であることがほとんどですから、
社会人としてのお母さん、お父さんの意見を本人に
堂々と展開してください。
つづく