日曜コラム 夏休み
梅雨明けがすでに発表され、季節には少し早い台風が過ぎ、
夏休みになりました。
ここ3日間ほど、秋を思わせる天気でしたが、電気予報は
60%台と私たちを安心させる数字でしのぎ易い日々でしたが、
これからが夏の本番ですね。
自宅の庭の草花もざわさわと旺盛に伸びています。
庭のはしに直径70センチほどのこんもりとした多年草の植込みがあります。
週末の夕方、家内が帰宅して庭を眺めながら、何かに話しかけています。
「こんにちは、出ておいで、元気でしょ」
「さっき、ちょっと見かけたんだけど、『かなちゃん』、今日は出てこないわ」
― ・・・・・・・。
「かなちゃん」とは、そのこんもりとした多年草に
巣くっているらしい蜥蜴でした。
私もこの時期になると、彼らがちょろちょろと庭を徘徊しているのを、
見かけます。茶色のものもあれば、銀色の縞模様のものもいます。
家内は岩手の山奥の農家育ちのためか、植物や小動物に対して、
とても親近感があるようです。
私は都心まで電車で1時間ほどの小さな町の出身ですが、
家内の育った環境に比べ、平地であり、田んぼも民家も
多いところです。
私にとっての夏休みは、川とそこに広がる田んぼに
毎日出かけ、自然を相手にたくさん遊ばせてもらった記憶があります。
川ではよく、ハヤやタナゴなどが釣れ、特に増水時、川の水が濁った
時が狙い目でした。
川に行くまで、田んぼのあぜ道を200-300メートル歩くのですが、
よくヤマカガシやアオダイショウなどのヘビに出くわしました。
遊び仲間の中には、闘争心のある子がいて、
ヘビと出くわすと、立ち向かい、捕らえるのが常でした。
今、考えるとヘビにとっては、大変迷惑であり、死活問題です。
田んぼの蛙、人手の入っていないやぶ蚊のたくさんいる林での、
蝉取り、早朝のかぶと虫、くわがた虫とり、
空き地でのゴム飛行機飛ばし、形だけの夏休み1研究、などなど
小学校のころの夏休みは、楽しかった記憶があります。
私が近所の友達と過ごした、川や田んぼの地域は
今は、民家と郊外型大型スーパー、量販店などで、埋め尽くされ、
川の土手はコンクリートで大方整理されて、
好き勝手に遊んでいた自然は、すでに私のこころの中にしか
ありません。
お盆の時期に毎年訪問する家内の実家の自然は、
埼玉の私のそれよりもとてもそのままのようです。
「子どもの時と比べると、ずいぶんと木々がおおきくなったわ」
というのが家内の毎年の印象です。
既に、私の息子たちの幼少時の夏休みには、
川でのハヤやタナゴ釣りはありませんでした。
また、ヘビとの一方的な格闘もなく、自然との対話は
コンピュータゲームに取って代わったようです。
それが現代の夏休みかもしれません。
実家に帰るたび、川と田んぼであった地域を通るのですが、
もちろん、昔の姿はどこにもありません。
しかし、不思議と私のこころの中では、田んぼも小川も
鮮明に今でも存在しています。
家内の「かなちゃん」との会話を聞いていて、
思い出した私の夏休みの風景でした。