日曜コラム 知性のみなもと
UCLAとUCバークレーの卒業生組織による
「震災後の日本のイノベーションはどうあるべきか」という
セミナーに先週の金曜日参加しました。
一橋大学名誉教授野中郁次郎さんと
政策研究大学院大学政策研究科教授黒川清さんの
講演の内容については、私の目指す留学の目標と
共通点があったので、あらためてご紹介したいと
思っています。
野中さんも黒川さんもウィキペディアでその経歴を
拝見すると、社会に多大な貢献をされていて、日本を代表する
「知性」といえる人物と思います。
講演の中で、野中さんはご自身が子どものころの原体験を
語られました。
「グラマン(二次大戦米軍主力艦上戦闘機)に追いかけられまして、
それはたいへん怖い思いをしました。
パイロットの顔が見えたのですが、その顔は笑っていたのです。
絶対にこのままでは済まさない。アメリカを見返してやる、
それが私の(学問の)キャリアの始まりでした。
気がついてみると、どっぷりとアメリカにつかっていました」
私は人を動かすその原動力に大変興味があります。
どんなに高尚な学問も知的な論理も、その根源には
人をしてそれを追求せしめる「動機」が必ずあります。
野中さんがさらっと語った子ども時代の原体験のなかに
知性の目覚めを私は痛感しました。
「知性」とは何かということを両氏ともにご自身の立場から、
若い人たちに伝えたかったのだと思います。
その本質は、知的な好奇心であり、与えられた知識ではなく、
自らの意思をもってつくるこころざしへの挑戦ということであると、
私は思います。
日本の官僚や管理者の人たちが、いかに立派な学歴を
日本のみならず海外で取得していても、それが自ら求めて
追求したものでなければ役に立たないと両氏は言われました。
受け身ではこのグローバル時代を乗り切れそうにありません。
そして、福島原発問題も日本から世界を見ている間は
問題解決の本質にはならないと言われました。
だから10代のうちに留学をさせてくださいと私は思います。
留学の本質は自己選択、自己責任の認識、
苦労を自ら乗り越える精神の確立、
自己世界の拡大などに集約されると思います。
今の世の中で、野中さん世代の人たちが多く体験した、
敗戦ショック的な原体験などはありません。
そのことを、ほとんどの親は理解していると私は
思っています。しかしながら、「教育」に問題意識を持たなければ、
受け身で子どもたちの日常はどんどん進んでゆきます。
結果として、旧価値観の人々が世に出るわけですが、
企業に入った途端に、それらの価値観が通じないことに
気づくと思います。
今の日本は旧価値観時代の物理的、精神的貯金で
保たれているような気がしてなりません。
独立独歩の人生を作るために、海外での体験を
より重視した教育のグランドデザインを
私はこれからも追求して行きます。