塾とボーディングスクール その3
生徒本位という考え方をすると、学校のあり方がすっきりするのです。
学校は生徒との約束を守る、その代わり生徒も学校との約束を守る。
その約束の内容は一人ひとり同じではありません。
「それでは学校の規則としてなりたたないではないか」という意見も
当然あると思います。
約束とは規則で生徒の行動を規制することではなく、
生徒一人ひとりが何を達成したいかを決めて、それに向かって
努力をさせるということにほかなりません。たとえば、
-自分の現在の偏差値よりも10ポイント高い大学に入りたい
-写真家になりたい
-ピアノが得意だから、続けたい
-ヒップホップダンスを本当の鏡の前で存分にやりたい
-英語が話せるようになりたい
-世界の人たちと友達になりたい
それぞれの宣言(コミットメント)にたいして、
達成するための戦略や技術を与えるのでなくて、
考える応援をするのが、私は学校の役割であると思います。
達成したいことが、学業であっても、なくても本人の自助努力の大切さを
気づかせ、自分で掴み取るという喜びを味あわせてやることが、
大人が子どもに教えてあげられる最大事であると思います。
一見、達成することが簡単そうでも、あるいは
一生涯かかっても達成できないようなことであっても、
それに立ち向かう勇気のきっかけ作りが学校で、
できたらよいと私は思います。
大人こそが、ものごとの成就がいかに大変かを知っていて、
成就のための苦労こそがその人を創るということを経験的に
熟知しているからです。
究極のところ、生徒は好きなことをやりたい。
学ばせる側は、好きなことばかりでは勉強にならない。
だから、お互いの約束事が必要で、それに向けて、
努力する体系が学校という組織であると私は考えます。
好きなことができる代わりに、これだけの義務がある。
そうした条件をお互いに認めることが学校生活の基本だと思います。
さて、日本にある膨大な数の塾は、生徒の希望を実現させるために、
とても貢献していると思います。
お互いの約束事が明確であり、それに向って塾も大変
努力しています。もちろん、生徒の自己実現のためです。
「偏差値UPだけが教育か」という議論はここでは成り立ちません。
生徒はUPしたいと言っているわけですから、
その「希望」をかなえることが、塾の使命となります。
そこに、塾と生徒のお互いの納得があると思います。
つづく