留学の効用 - 英語力獲得とそのプロセス2
留学して最初の年が過ぎ、生活に困らない英語力が身につきます。
そこからがアカデミックな意味では、留学のスタートといえるかもしれません。
コミュニケーション力が基本的に整ったとき、次にどうするかを
留学生は一人で考え、検討し、そして決断をしなければなりません。
日本にいたときが「夢」のように思えるかもしれません。
留学していなければ、一人で考えて決断することに
プレッシャーを感じることはないと思います。
考える、(諸条件を加味して)検討する、決断する、それは大学時代に
じっくり実行に移せばよく、ただひたすらに受験勉強をする日々。
とにかく、大学に入りさえすれば、
時間はたっぷり取れるからという理屈です。
留学初年度、留学生たち、またお母さんからの質問を受けて
感じるのは、日常の小さな判断や決断にそもそも子供たちが
不慣れであるということです。
しかし、留学した以上、自己選択、自己責任は必然です。
誰も決めてくれないですし、こちらが意思表示をしない限り、
相手は動きようがないのが、英語圏の文化といえると思います。
この概念を体得するのに、留学生たちはとても時間がかかります。
日本での習慣が振り切れない、できるなら異文化を受け入れたくない
と無意識に感じるのが「人の常」ではないでしょうか。
いかに留学先での初年度が、生徒たちに精神的負担を強いるか、
想像していただけると思います。
留学している生徒たちにとって、一度習得した生活の知恵(ライフスキル)は
新たなる常識ですから、それ以前の状態というのは「遠い思い出」となります。
その新ライフスキルのもとで彼らが何にチャレンジするかが、
将来の進路に大きくかかわってゆきます。
海外で新たなライフスキルを獲得するために、苦労すればするほど、
その成果も大きなものとなると私は思います。
苦労も子供たちによって千差万別です。ホームシック、友人シック、
国際間での親子喧嘩、現地での人間関係のトラブル、異文化への不適応、
生活環境の激変による体調変化などなど、
私は考えれば考えるほど、子供たちの生きる力を尊重したく、
ほめてあげたいと思います。
ほめられる、尊重されるということが、子供たちにとって新常識となり、
相手もほめてあげられ、相手も尊重できるようになったときに、
彼らは、将来の自分の可能性についても、しっかり考える基盤を
整えるのだと思います。この基礎が完成したときに、
彼らの英語力は、生活レベルから学習レベルにアップグレードします。
この時点で初めて、大学受験の準備も整えることができるでしょう。
大学に入学するためには、どうしても「暗記」しなければならない
たくさんの知識が必要です。それは、ほとんどの生徒にとってつまらなく、
退屈な仕事です。しかし、避けては通れませんん。
それを推し進める精神力の根源に、私は子供たちに芽生えたプライドがあり、
そのプライド形成にほめられること、認められることが絶対に必要だと思います。