教育のグランドデザイン― 3
教育のグランドデザインを作る要素は二つあると思います。
子どものこころに関する教育(私は基礎教育と呼んでいます)と
知識や正解を導くための思考といった学術技術に関することです。
前日のブログでご紹介しましたが、知識や技術をいくら教え込もうとしても、
子どもたちがそれを受けるこころのうつわが完成していないと、
とても外部からの情報を自分の頭に蓄積することはできません。
だから、小さいうちから知識や技術を子どもたちに教え込んで、
頭の中の学習装置を完全にしておくと考えられなくはないですが、
私が今まで見てきた子どもたちは、それほど親や周囲が思うようには
動いていないようです。
では、こころのうつわを発達させるために小さなうちから、
基礎教育の訓練をしておこうということになります。それが、しつけです。
しかし、お母さんが子どもに「お行儀よくしなさい」にたいして、
「はい、母上」という社会の枠組みはとうの昔に消えてしまいました。
そして、しつけにしても、教育にしても、親が描いた
グランドデザインどおりに子どもが教育街道まっしぐら
というわけには行きません。
「子どもをやる気にさせるのには、どうしたらよいのですか」
という質問があると思います。
私は自然が一番良いと考えています。
留学は子どもたちを自然に帰す有効な方法であると思っています。
私の考えている自然とは、競争から協力へ、孤立から共存へ、
強制から自主的にといった状態で生きてゆくことです。
それが、異文化のなかでできると私は確信しています。
子どもたちは、留学すると「自然に」そのように行動し、考える
ようになります。そうしないと、現地での生活が辛いままだからです。
日本にいたときは学習競争があり、携帯にはたくさんの電話が
登録されていても孤独感、孤立感があり、結局勉強もやらされていると
子どもたちは感じていないでしょうか。
自分で自分をあらたにしつける。その原点には「感謝」があります。
ゼロの環境で自分がやってゆけることに対して、周囲に感謝し、
そして、スポンサーであり、保護者である親の「存在」に子どもは
新たに「感謝」するのではないでしょうか。
英語が全く使えない10代の子どもたちが、1年、2年、3年と海外で
年を重ね、成長する姿を見続けてきた私は、
少なくとも彼らの「生きる力」だけは否定のしようがありません。
その力を基点にして、本人は自分の将来のグランドデザインを
考えることができると私は思っています。
ご家族にとり、留学前のグランドデザインが子どもたちの成長の過程で、
修正されたり、変わったりすることもあると思います。
そのようにして、グランドデザインが完成するころには、
子どもが自分の「人生」のグランドデザインを少しばかり、
考え始める頃だと思います。