留学して半年後 - 安定期
カウンセリングでよく受ける質問に、「留学に失敗して帰ってくる子は
どのくらいいるのでしょうか」というのがあります。
―100人(小・中・高生)留学したとして何人くらい
挫折して帰ってきてしまうと思いますか。
母:「そうですね、半分くらい」
本人:「10人くらい」
―1人か2人です。
留学して半年間、現地で過ごすことができれば、おおよそ挫折して帰国する
生徒はいないというのが私の経験から言えることです。
留学初期の混沌を解決するのは、留学した本人の意識であり、
現地で留学生の世話をする先生や担当者はその「現実」を
よく心得ていますから、本人を悪く刺激するような指摘や
成績について細かくうるさくは言いません。
干渉が日本に比べると極端に少ない英語圏の人間関係のあり方、
はっきりと自分の意見を主張すること、
自己選択、自己責任の重要性などを、
試行錯誤や精神的プレッシャーのなかでいかに学ぶかが、
留学生の最初の半年間の最大課題です。
繰り返しになるかも知れませんが、子どもたちは精神面が強化されることにより、
学習技術や知識の習得という段階に入ってゆけると私は考えています。
その一連のプロセスが留学当初の半年あまりに凝縮しているわけです。
生活にかかせないコミュニケーションレベルの英語を
サバイバルイングリッシュと言いますが、成績の良し悪しにかかわらず、
最初の半年間ですべての生徒がサバイバルレベルでの英語を学びます。
その最大の先生は異文化そのものです。
彼らに必要なのは、新たな文化に適応しようとする「勇気」なのだと思います。
意欲や基礎的な知識も必要不可欠ですが、おおよそ留学するときに、
意欲や基礎的知識がゼロの生徒は殆どいません。
「こんなことを言ってもいいのか」、「まだ自分の意見をクラスで言えない。
それほど英語できないし」、「みんな私のこと、どう思っているのかな」など、
彼らは自分の世界と新たに出現した世界との狭間で行きつ、戻りつ、
あと一歩の勇気を振り絞って、今までにない現実に向かっています。
そして、一つ、また一つと小さなこと、たとえば現地の生徒の質問に
答えられたこと、先生から質問して誉められたこと、
宿題をこなせたことなどを積み重ねて、「できるんだ」という実感を
自信に結び付けてゆく作業を子どもたちはこの時期に行っています。
安定するということは、いちいち落ち込まないということかもしれません。
落ち込まずに何かあっても受け止めることができる、
半年くらいの間に子どもたちの自立の一つのかたちが完成すると
私は考えています。