#3 ボーディングスクールの教育－好きなことから使命感に
音楽、絵画、演劇、写真、陶器、そしてスポーツ全般を得意としている生徒にとって、ボーディングスクールの教育は好機を与えてくれます。もちろん、中等教育機関として言語、理数、社会、外国語の基礎教育を踏まえたうえのことです。
スポーツや芸術系に関することが好きな生徒に対して、それを伸ばすためには、それなりの設備が必要です。また、適切に指導するための人材も必要になります。
勉強だけであれば、学校としては、先生と教室があれば済むわけですが、芸術に関しては、オプションの割には、設備と人材に費用がかかります。従って、学校の運営がしっかりしていないと、うまくこれらのオプション教育は機能しなくなります。
好きなことを追求するためには、学校として経済的な力がないと簡単にはいきません。また、好きなことを追求することと、教育的結果が伴わない場合も結局、生徒とその家族からの期待に応えられないわけですから、私立の学校として継続させるのは、難しくなると思います。
ボーディングスクールを見て、日本からの訪問者は例外なくその施設の規模、立地、維持の状態などに感動します。「素晴らしい」という感嘆の言葉には、むしろ驚きの感情が込められています。
日本の学校づくりの基準では考えられない学校がそこにあるから、驚くわけですが、それらの学校の歴史が優に百年を超えていることについても、訪問者の人たちは、その学校観を根本的に変えられるように思います。
もちろん、生徒自身も言葉多くを語らなくても内心では驚きと期待と不安で満たされていることでしょう。
芸術系、スポーツ系を将来のなりわいとする生徒は稀な中で、どのようにしてボーディングスクールはその教育の伝統を百年以上に渡って維持し続けているのでしょうか。
ボーディングスクールでは、好きなことができる環境ではありながら、その選択は生徒が自主的に行います。その自主性を育て、独り立ちできるようにサポートするのも先生の大きな役割です。そこにある施設とインフラを十分に活用することで、自己管理能力を向上させ、不得意な分野にもチャレンジすることの勇気や決断力も鍛えられているのではないかと思います。
それらの総合力は、生徒たちを次の段階の教育に進ませるための確実なパワーとなっていくと思います。
