自然食と自然人
私は自然食には特に興味があったわけではないのですが、
それにたいへん関心を持つ人の勧めで自然食レストランで昼食をいただきました。
オフィスと同じパレスサイドビル内のお店なので、外からはなじんでいましたが、
中に入ってみて驚きました。
そこで働いている人がいかにもやさしそうで、笑顔で、自然ににこにこしていて、
見ているだけで大変嬉しく、「食べるぞ」という意欲がわいてくるのです。
自然食愛好家の友人が、「今日は珍しく混んでるね」と自然ではあるけれど、
辛口コメントをすると、すかさず「珍しくはないでしょう」と
まともで、対等で、自然な返事が店員さんからありました。
セルフでトレーを取って、5-6点のなかから、自分のすきなカップ一杯の
お惣菜を選び、メーンのすり黒ゴマのせ玄米、甘だれつきオリジナル豆腐、
大根と人参の酢和え、おしんこ少々を大き目のひと皿に盛ってもらい、
味噌汁orスープの選択は味噌汁にしました。
自然食というのはいわばファーストフードの逆のようなもので、
味が平べったいという感じでした。そして、量が多くなく、
ケミカル一切なしですから、実に健康にはよいと思いました。
友人によると、ビル内の外国人もよく来るそうです。
北米と違って、チップ制度のない日本ですから、食事中、
Everything is Ok? と聞かれることはもちろんありませんが、このお店ならば、
店員さんの誰でもいいので、「味かげんはいかがでしょうか」などと
聞いてほしいと思いました。
コミュニケーションが楽しそうと思わせてくれるホスピタリティーが
彼らにはありました。
同じ自然食でもたまに利用するすし屋さんとはかなり隔たりがあります。
なぜすし屋さんを昼に使うかというと、一時帰国した生徒も外国からのお客さんも
おおよそ「お昼、何が食べたいですか」と聞くと「寿司」と答えるからです。
とにかく店員さんが忙しくて、昼食時はフル回転で、
「笑顔を作ってる暇がない」のだと思います。
「いらっしゃいませ~」
「ご注文は」
「お待ちどうさまでした」
「ありがとうございました」
というルーティーンで昼の1時間半、板前さんも店員さんもえらく忙しいのです。
活気がその店の持ち味かもしれませんが、
食べに来た人はピーク時にはゆっくりとしてはいられません。
濃い目の醤油でガツンと寿司や天丼を口に放り込んで、「ごちそさん」。
語らいは上の階の喫茶店でというのが暗黙の了解なのかもしれません。
なぜこの自然食レストランの店員さんは自然に笑顔が作れるのだろうと考えました。
セルフ(サービス)で、味のアクセントが極めてフラットで、丁度類もシンプル。
人も、ものも、食べ物も無理も飾りもない。静かさと清潔感と親近感があります。
忙しくても、せかされるというプレッシャーはありません。
自然食は作る人も自然でなければ作れないのだと思いました。
また訪ねてみたい ― そのように思わせてくれる自然のおもてなしは
私のこころにとって、よいご馳走でした。