寮生活の応用編-相手の責任とは
今までたくさんのボーディングスクール留学生からルームメイトの苦言を聞きました。自分のセーターやスウェットシャツなどを断りなく着られた、貸したものが返ってこない、部屋の掃除はいつも自分がやっている。
「もう、ちょっと聞いてくださいよ。私のルームメイト最悪。だって・・・」
それを聞いていた男子生徒が
「エッ、お前もかよ。オレなんか、パソコンは壊されるわ、貸したCDは家に置いてきたなんて平気で言うんだから、信じられない」
留学1年生の言うことは大体一致します。私は当然、「相手になんて言っているの」と質問しますが、答えは
「いいんです。もうパソコン直ったし。CDは今度のLong Weekend終わったら返すって言っていましたから」
「でもたぶん返ってこないよ。はっきり言った。ルームメイトはなんて言ってるの」
「・・・」
ボーディングスクールは国際社会です。何カ国からの留学生が現在あなたの学校で学んでいますかと聞くと「メキシコ、ベネズエラ、ブラジル、チリ、ドイツ、スペイン、イタリー、ロシア、カザフスタン、インディア、インドネシア、タイランド、ベトナム、コリア、チャイナ、タイワン、Andジャパン」これはボーディングスクールのスタンダードです。さて、このようなミニチュア国際社会にあって、ジャパンからの生徒のみが相手の責任を問えないのはちょっと残念です。なぜならば、これら多くの国からの生徒は英語力の程度にかかわらず、相手の責任を問うからです。
ボーディングスクールで相手の責任を問う場合そのほとんどのケースがルームメイトといっても良いでしょう。悪いことは悪いのだからはっきりと「私のスウェットシャツ返して」といえばよいのですが、その一言が初年度は出ない。おそらく、その後のことをあれこれと想像してしまうのでしょう。そして、これからうまくやってゆくのだから、様子を見ようという結論になる。それも間違ってはいるわけではありませんが、様子をみても改善されないことにやがて気づくことになります。
ここは先生の力を利用出来ます。Confidential (秘密)にしてくださいとして相談すれば、留学生担当の先生、寮母さん、あなたのアドバイザーは喜んで相談に乗ってくれます。
前述の生徒たちは、毎年同じ愚痴を繰り返すわけではありません。まず物理的に再発防止策をとります。ここではその具体的内容が主題ではありませんから、省きますが、多くの留学生がある時期が来ると、意を決してルームメイトに「私のスウェットシャツ返して」と言うのです。ルームメイトの返事は
Oh, I’m sorry. Here you are.ということが多いのです。
「あれっ。何それ。もっと早く言えばよかった」
相手の責任を問うときには自己主張の論理とは違い、はっきり言うだけで説明責任は通常ありません。ですから、もっと気楽にはっきりと相手の責任を問えばよいのです。それでも相手が応じない場合は、相手を伴って先生に相談するのが良いでしょう。その勇気を持つことが必要で、慣れてくると自分が間違っていなければ、先輩後輩は関係ないのが、ボーディングスクール社会の良いところです。学業成績と違って、このような態度や行いを学校は表彰したりはしません。しかし、親元をはなれ、自力で問題解決ができることはあなたにとって大きな自信となります。ボーディングスクールでは自分で自分を表彰するような機会もたくさんあります。そんなチャンスが作り出される学習と生活の場であるからこそ、母校に多くの卒業生が愛着を感じるのだと思います。