学生ビザの取得
90年代の後半から2005年にかけて2度にわたりアメリカ大使館は初等・中等教育機関に留学する日本人学生のビザ発給に厳しい制限を加えました。ビザ発行を担当する領事が、18歳以下の申請者はアメリカに永住する可能性が高いという考えのもとに、ビザ発給の基準を引き上げたのです。彼らの任期は3年ほどですからこの期間で合計6年くらいの期間、たくさんの18歳以下の留学希望者がビザの発給がなされないためにボーディングスクールへの留学を断念したり、カナダや南半球へ留学先を変えたりもしました。テンスクールズのひとつChoate Rosemary Hallに合格しながらビザを拒否されたケースもあると聞きました。
2005年以降、ビザを拒否された生徒は私のリストにはありません。現在もビザ発給は順調です。アメリカ大使館主催の新任領事の披露パーティーで挨拶したビザチーフ(査証部の責任者)は日系のアメリカ人でした。しかし、3年に一度、世界のどこから転勤してくるかわからないビザチーフに備えるため、ビザ申請に当たって上記の2つの質問に答えるための考え方をお伝えします。
アメリカ大使館ではビザ拒否の申請者に対し拒否理由移民法214条B項に示された文書を渡します。それによると拒否理由は「3つの絆」のうちいずれかに問題があるとされています。3つの絆とは、社会的絆、経済的絆、そして家族との絆です。申請者は未成年の学生ですから、彼らの社会的絆は学校と考えられます。すなわち、学校との絆がないとは、学校が嫌いだということです。だから、アメリカに行っても学校が嫌いになるという理屈です。何をもって嫌いと判断されるのか。それは成績が平均以下であること、出席率が低いことなどが考えられます。
次に経済的絆ですが、これはアメリカに出稼ぎに行くと考えられますが、日本人ボーディングスクール留学生はこの項目は無視してよろしいでしょう。
最後の家族の絆ですが、一言で言えば家族が嫌い、すなわち家出です。家族が日本から追い出したいのか、本人が家族や日本から脱出したいのかどちらでも領事にとっては不発給なのです。領事が何を根拠にそのように判断するのかはなぞです。学校の成績が悪い、出席率が悪い、それをほっておく家族は本人を見捨てているのだということなのでしょうか。
社会的絆、家族の絆を成績や出席率のみで判断されてはたまったものではありません。領事に絆がないと判断されないために必要なことは、本人がはっきりとなぜ留学したいのかと留学後を答えることです。
本人の意見を表明する場は、面接時しかありません。面接が重要です。
面接ははっきりと大きな声で答える。
相手の目を見て答える。
笑顔で答える。
笑顔(smile)は申請者に向かって領事が実際にマイクを取って言ったことばなのです。
領事は留学の専門家ではありません。むしろ素人です。ですから、理想的な答えを作り出す必要はなく、領事をその気にさせればよいのです。「なぜ」については「小さいときからの夢だ」でもかまいません。それが本当にそうだとわかればよいのです。「その後」については「帰国して大学に行く」、「将来は日本でビジネスコンサルタントをやりたい」など自分の意見をはっきり言い切ることです。「帰国するとなぜ言い切れるのですか」という質問に、「私は日本人だからです」と答えた学生が一人いました。本番の面接でもはっきりそう言ってビザが取れました。
「私は日本人だから母国に帰国します」-何の証明も無いいわばこころの言葉ですが、うそのない胆力のある発言に領事は反応するのでしょう。
最後にビザ取得要領での禁句は「アメリカで仕事をする」、「将来は未定である」です。いずれも学生という立場以外のことです。仕事をするには仕事をするためのビザが必要であり、将来未定は帰国に置き換えないといけません。ビザ取得方法は詳しく丁寧にアメリカ大使館のホームページ(http://japan.usembassy.gov/j/visa/tvisaj-niv-walkin1.html)に紹介されています。ビザ申請の書類や方法は頻繁に変更されますので、必ず大使館のサイトで確認して進んでください。